VOICE~岐大医学部から~
地域医療医学センターからのメッセージ
医学部附属地域医療医学センター
教授 牛越 博昭 先生
『VOICE-岐大医学部から-』第108回は、令和2年8月に就任されました、医学部附属地域医療医学センター 教授 牛越 博昭 先生にお話を伺いました。
地域医療医学センター教授としての抱負
地域医療医学とは、いわゆる医療の原点と考えています。よき医療を提供できる人材の確保と育成を私自身の内科、循環器内科、救急・集中治療、プライマリケア、災害医療、予防医学、東洋医学等の幅広い経験から、継続して行なっていきます。その際に、大切なのは医師を志したマインドを忘れずにいることだと思います。私自身は身内や友人の死がそのきっかけになっています。また学生時代(卒前)から研修医、専攻医までのシームレスな教育サポート体制を構築したいと考えています。継続して学び続けることが重要です。さらに医療は世の中の様々な動きに大きく影響をうけます。新規の感染症の蔓延、人工知能や情報技術の進歩、人口構造の変化等です。患者さんを人として全体をみる(診る、視る、見る)ことのできる"グローカル"な視野を持った医師を育ててまいります。
岐阜県の地域医療について
2007年4月に地域医療医学センターが発足しました。この時点で、岐阜県の人口10万人当たりの医師数は全国平均(212.9)を大きく下回る177.8人でワースト7でした。歴代のセンター長や行政のご協力により、少しずつ増加しておりますが、2018年段階でも215.1人(37位)でまだ十分とはいえません。各診療科の医師数も5つの医療圏(岐阜、西濃、中濃、東濃、飛騨)において、岐阜医療圏以外はすべて全国平均を大きく下回っています。岐阜県は森林面積79.1%(全国2位)の緑の多い県で、飛騨医療圏の高山市は東京都の面積と同じですが、基幹病院は1つのみです。人口も県南に偏っています。医師数の偏在化や人口分布の問題もありますが、まだ十分な医療を岐阜県民に提供できている状況とはいえません。
今後の教室運営について
「学び、究め、貢献する」岐阜大学の理念に則り、よき医療を提供できる人材の確保と育成のため、教室のスタッフと協力して面談、地域医療実習、セミナー開催を通じて、キャリアパス支援をきめ細かく行なっていきます。特に女性医師の活躍のための就労支援とアドバイス、また各専門診療科の先生方との橋渡しや進路相談を行い、県内をはじめとした関連病院とのネットワークをつくり、岐阜県、岐阜大学から魅力ある人材の輩出と独自の教育手法の開発や地域に関連した研究を発信してゆきたいと考えています。
医師を目指す学生へのメッセージ
医学部医学科の6年間の学びは長いようであっという間です。でも、皆さんの小学生時代を思い出してみてください。1年生と6年生では驚異的な成長を遂げます。そのためには、学生時代から様々な経験を通じて医師の卵として'3つの力'を身につけてください。
1つは、医学の総合的な診療知識や技術の習得はもちろんのこと、疾患のみでなく、その人の人生や生活環境をみる能力、2つめはチーム力です。医師のみでは何もできません。医療・保健・福祉の多職種連携が重要です。そのためにはコミュニケーションが大切です。クラブやサークル等の課外活動や社会活動を通じて身につけてください。最後に医師は生涯学び続ける必要があります。そのため"頭と心と身体"のバランスのとれた持久力が必須です。医師を志した初心を忘れることなく、学び続けてください。期待しています。
略歴
1994年3月 | 岐阜大学医学部 卒業 |
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5月 | 三井記念病院 内科臨床研修医 |
1996年 | 三井記念病院循環器内科 医員 |
1998年 | 岐阜大学医学部附属病院 第二内科 入局 羽島市民病院 内科 医員 |
2001年 | 岐阜大学医学部附属病院 第二内科 医員 |
2004年 | 岐阜大学医学部 遺伝子治療再生医科学講座 助手 |
2006年 | 岐阜大学大学院医学系研究科 循環病態学 助手 |
2007年 | 岐阜大学大学院医学系研究科 循環病態学 助教 |
2009年 | 岐阜大学医学部附属病院 高次救命治療センター 講師 |
2014年 | 岐阜大学医学部附属病院 高次救命治療センター 准教授 |
2017年 | 岐阜大学医学部附属病院 診療録管理室 室長(兼任) |
2020年8月 | 現職 |