概要

VOICE~岐大医学部から~

地域看護学分野からのメッセージ

医学部 看護学科
地域健康援助学講座 地域看護学分野
教授 纐纈 朋弥先生

『VOICE-岐大医学部から-』第106回は、令和2年4月に就任されました、医学部 看護学科 地域健康援助学講座 地域看護学分野 教授 纐纈 朋弥先生にお話を伺いました。

教員になられたきっかけは?

自治体の保健師として勤務していた際に、国のモデル事業に指定され健康日本21の地方計画版を岐阜大学と協働し策定することになりました。そこで、科学的根拠に基づく地域保健活動の実践と評価、そのプロセスにおいて疫学や統計学的手法、研究デザインを身につけたいと思うようになりました。当時、ご指導いただいた大学の公衆衛生学教室の先生との出会いが大学院への進学を考えるきっかけとなりました。その後、大学院ではティーチングアシスタントとして実習指導などを経験させていただき、次世代を育てる教育に関心を持つ様になりました。縁あって、大学院で学びながら神戸大学大学院保健学研究科の恩師のもとで助教としてお世話

どのような研究を行っていますか?

これまでに行った研究の一つに、「IT機器を活用した独居高齢者の生活の見守りに関する研究」があります。急速に進行する高齢化、過疎化と同時に高齢世帯、高齢者の単独世帯が増加しており、高齢者の安全・安心を支えるシステムの構築が課題となっています。本研究では、生命維持に必要不可欠であり、生活行動に伴い変化する「水道」に着目し水道水の使用状況から「生活の見守り」を行いました。産官学で共同し1年以上に亘り実証実験を行いました。その結果、本システムの活用により、人の目だけは捉えにくい生活状況や生活行動の変化を客観的に捉えることが可能であることが明らかとなりました。今後、地域で潜在している支援が必要な人を早期支援につなげるためのツールとしての活用が期待されます。

もう一つの研究として、「産後の再喫煙防止を目的とした禁煙サポートに関する研究」を自治体と10年以上に亘り行っています。喫煙習慣のある妊婦の多くは、妊娠を機に喫煙を中止します。しかし、産後に再喫煙する女性も多く再喫煙防止が課題となっています。先行研究から産後の再喫煙にはパートナーの喫煙が影響していることが明らかとなりました。このため、妊産婦とパートナーを対象に地域で保健師・助産師が協働して取り組む禁煙サポートプログラムや教材を開発し、介入を行ったところ喫煙率の低下に一定の効果があることが検証されました。現在、開発したプログラムが一般的に適応可能かどうかを検証するために、複数の地域で介入研究を開始しました。その結果が出るのは3年後、これからの社会を支える子どもの健やかな成長とその家族、地域の健康をまもるために、引き続き地域と協働し研究を行っていきたいと考えています。

看護師・保健師・助産師・養護教諭を目指す学生へのメッセージ

看護の場は、治療を主とする病院から生活を支える施設や在宅など地域へと広がり、看護職の役割や活躍の場も地域へ拡大・シフトしています。特に保健師は、地域で人々がより健康に暮らせるよう生活を支えています。そして、人々が幸せに暮らすために、健康や生活という大切なものに関わることができるやりがいのある職業です。現在、新型コロナウィルス感染症の対応や拡大防止のために最前線で活躍する保健師がクローズアップされています。今後、保健師には、社会情勢が変化する中、さらに社会の変化に応じて先を予測し柔軟に対応して行く力とともに新たなものを創り出していく力が求められています。

略歴

1987年 奈良県立保健婦学院 卒業
同  年 保健師として多治見市保健センターに採用
2007年 神戸大学医学部保健学科 助教
2008年 神戸大学大学院医学系研究科保健学専攻(博士前期課程)修了
同  年 岐阜大学医学部看護学科 助教
2010年 大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻研究生 入学
2013年 岐阜大学医学部看護学科 准教授
2018年 大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻 博士号取得
2020年 4月より現職



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