概要

VOICE~岐大医学部から~

医学系研究科・医学部長からのメッセージ

医学系研究科 分子・構造学講座
細胞情報学分野
教授 中島 茂先生

『VOICE-岐大医学部から-』第105回は、令和2年4月から医学系研究科・医学部長に就任された、医学系研究科 分子・構造学講座 細胞情報学分野 教授 中島 茂先生にお話を伺いました。

医学系研究科・医学部長としての抱負と構想

岐阜大学のキャッチフレーズはグローカルであり、岐阜大学大学院医学系研究科・医学部は、岐阜県下唯一の医学部、医学系研究科として、岐阜県内のみならず、中部圏や日本全国、さらには世界でも活躍することのできる医師、看護師を育成し、国際的にも評価されうる独創的かつ先進的な医学系研究を進めていくことが使命と考えます。医学部は附属病院を有しており、本病院は岐阜県における先進・高度医療を担っていくとともに、岐阜県や県内の市町村と協力して地域医療の発展に関与していく責務を負っています。組織の発展の要は「人材」ですが、医学科の入学定員は増えたのに教員は削減され、人材育成を行ってきたこれまでの体制を維持・継続させることが困難な現状です。この状況を克服するためには、これまでの既成概念にとらわれず、より長期的な展望を持って、新しいシステムを構築することが必要であると考えます。

令和2年4月に岐阜大学と名古屋大学の法人統合により東海国立大学機構が始動しました。医学科は教育や研究について、名古屋大学医学部との協議を始めました。看護学科はすでに名古屋大学保健学科看護学専攻との連携に向けた協議を開始し、第四期中期目標期間に向けた将来構想を制定しています。また、令和2年4月に医学教育開発研究センター(MEDC)を中心に日本初の医療者教育学専攻(修士課程)が開設され、医療職教育リーダーの育成が開始されました。この機会を変革のチャンスととらえ、次世代に向けた教育・研究体制を構築するために、現状をしっかりと点検して、改革を行う必要があると考えます。

医学科は平成27年12月に受審した日本医学教育評価機構(JACME)による分野別認証評価でグローバルスタンダードに適合すると認定されています。その際の指摘により医学教育IR室を設置し、その分析に基づいた指導により医師国家試験合格率の改善など成果を上げています。また、国際認証に向けた72週以上の臨床実習の実現と、テュトーリアル教育の点検と新たなアクティブラーニングシステムを導入する教育プログラムの改革が進行中です。2022年度からは医学部入学定員の改革(減員)が予定されており、この機に入試から卒業認定までの教育・学生指導システムの点検とさらなる改善に取り組むことが必要と考えます。本学の地域枠入試は岐阜県や周辺機関などの協力の下に、定員充足や卒後の地域内勤務など成功例と見なされています。一方、国際指向で海外での選択臨床実習を行う学生も着実に増えています。今後は、医学に必須の英語教育を強化して、グローカルな貢献をさらに高められるように、第四期中期目標期間に向けて、地域と連携した医療人の育成と確保の継続、能動学習の充実と世界基準に適合したカリキュラムによる国際感覚を持つ医師の育成を目標として設定し、その実現に向けた体制を構築したいと考えます。

司町から柳戸地区へ移転して15年が経過しました。岩間前研究科長からの共同研究設備などの点検、整備、更新の取り組みは継続したいと考えます。大学全体の人件費の抑制により、これまでの大講座・分野体制を維持することは困難です。移転時には基本設計の段階から各階単位での大講座体制で講座内での教育、研究、運営の連携が協議されました。しかし、移転直後の改組により新たな現在の枠組みとなり15年経過しました。将来に向けた大講座や分野のあり方を、今一度検討すべきであると考えます。リサーチマインドを持った人材育成、それを達成するシステムの構築に教員の皆様と知恵を出し合えたらと考えます。

この原稿を書いている4月上旬には、岐阜県知事から非常事態宣言、外出自粛要請が出されるなど、国内外でコロナウイルスが猛威を振るっています。平安時代に藤原四兄弟が相次いで天然痘で死亡した天平の疫病大流行、中世ヨーロッパのペスト(黒死病)、そして100年前のスペイン風邪など、人類の歴史は感染症との戦いでもありました。昔の人々は病の原因や対処法が分からず怯え狼狽えました。しかし、コロナウイルスは眼には見えませんが、現代に生きる我々は敵の正体を知っていますし、ワクチンや治療薬の検討・開発が進められています。また、副次的ですが、岐阜大学医学部はネット講義の整備を急速に進めています。これは今後のe-Learningプログラムの充実、アクティブラーニングの推進に大きく貢献します。明けぬ夜は無く、ピンチのあとにチャンスありです。このコロナウイルス騒ぎは日本人ひとりひとりが自己を見つめ直す良い機会ではないかと考えます。このコロナ騒ぎが一刻も早く終息し、平穏な日常生活が戻ることを祈念しております。

関係者の皆様には、岐阜大学医学系研究科、医学部の運営についてきましてのご協力とご指導・ご鞭撻をお願いして、ご挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

略歴

1982年 岐阜大学医学部医学科 卒業
1986年 岐阜大学大学院医学研究科 修了
岐阜大学医学部助手(生化学)
1991年4月~
1993年3月
ワシントン大学 (Seattle, USA)留学
1993年 岐阜大学医学部講師(生化学)
1997年 岐阜大学医学部助教授
(生化学)
1999年 岐阜大学医学部教授(生化学)
2005年 岐阜大学大学院医学系研究科
教授(細胞情報学)
2018年 岐阜大学大学院医学系研究科
副研究科長
2020年 4月より現職


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