概要

VOICE~岐大医学部から~

退職教授からのメッセージ

脳神経科学
精神医学分野
塩入 俊樹 先生

『VOICE-岐大医学部から-』第146回は、令和8年3月をもって退職となった、医学系研究科 脳神経科学 精神医学分野 塩入 俊樹 先生にお話を伺いました。

教員生活を振り返って

2008年の6月、岐阜大学医学部に赴任させていただき、2026年3月に退職予定ですので、17年10カ月間、お世話になったことになります。皆様、ありがとうございました。           私の教員生活を振り返りますと、卒後直ぐに母校の滋賀医科大学の大学院に入り、その4年後から今日までずっと教員をしており、トータル36余年、3つの大学(滋賀医大→新潟大→本学)で教鞭をとって参りました(その間、米国留学2年7カ月)。若い時も関連病院に出向したこともなく(希望は度々出したのですがその当時の教授から即却下!そういう時代でした、苦笑)、留学後は主要スタッフとなり、最後は教授にまでなってしまった関係で、臨床医としては珍しい?大学純粋培養教員なわけです。そうなると臨床ができない頭でっかちな大学人が出来上がってしまいそうなので、若い頃から様々な精神科医療機関でパートや当直をやり、実臨床の経験を積んできて、今でもそのスタンスは変わっておりません。本学でも臨床に重きを置き、外来は週3回行っており、研究は臨床研究オンリー、教育は実臨床に即した内容を、チュトーリアル教育ではActive Learningの手法を、臨床実習ではClinical Clerkshipを重視してきました。ですので、本学で行ってきた、臨床、研究、教育は、36年間の私の大学教員としての集大成なのです。

次世代へのメッセージ

『次世代』とは、単に次の世代を示す言葉でなく、「未来にわたる新しい価値観や技術、社会構造などを指す言葉」だそうです。確かに、AIやIoTは『次世代』技術だし、自動運転は『次世代』自動車に必須の技術ですよね。つまり、『次世代』は新しい可能性や未来を想像するための重要な言葉です。まず、私の専門の精神医療の『次世代』についてです。脳は21世紀最後に残った身体のブラックボックスと言われ早四半世紀が経ちますが、未だに精神疾患の原因は不明です。21世紀中の解明は困難でしょう。とは言え、心の病は増加傾向にあり、その治療には引き続き薬物療法と精神療法が用いられ、前者は薬理学的に異なる作用の薬が続々登場し続けますが、結局対症療法に過ぎず、後者の重要性が増します。ですが精神科医数不足のため、AIを活用した精神療法的アプローチが主流となり、様々なアプリが開発され、政府もそれを推奨し、未病での心のケアが我が国の精神保健の重大テーマとなります。そのような中、精神科医は薬物の最適な選択はAIにとって代わられ、承認ボタンを押す(責任)だけかもしれません。最後に、次の世代の医師の先生方に、三言。臨床では『患者さんを親、兄弟、親戚、親友だと思って接する』、教育では『勉強とは(自分が)わからない所を見つけることで、褒めて育てる』、研究では『臨床研究は日々の日常臨床の観察と気づきに基づくもので、その目的は患者さんファースト!』。そして、人生には辛いこと、悲しいこと、二度と経験したくないことが沢山ありますが、無駄なことは一つもありません。

略歴

1987年3月 滋賀医科大学医学科卒業
1991年3月 同大学院医学研究科卒業
1991年4月 同附属病院助手(精神神経科)
1996年3月 カリフォルニア大学アーバイン校精神医学講座留学(Visiting Professor)
1998年11月 新潟大学医学部附属病院助手(精神科)
1999年7月 同院講師(精神科)
2000年8月 新潟大学医学部助教授(精神医学講座)
2008年6月 岐阜大学大学院医学系研究科教授(精神医学分野)



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