VOICE~岐大医学部から~
公衆衛生学分野からのメッセージ

生命関係学
公衆衛生学分野
堀内 清華 先生
『VOICE-岐大医学部から-』第147回は、令和8年4月に就任されました医学系研究科 生命関係学講座 公衆衛生学分野 教授 堀内 清華 先生にお話を伺いました。
医師になられたきっかけは?
私は小さいころから好奇心が強く、いろいろなことを試してみたい性格だったそうです。ジュニアレンジャーとして活動する中で、自分を取り巻く自然や社会に関心を持つようになり、人に関わる仕事がしたいと感じるようになりました。中学生の頃、ボランティア活動に参加したことをきっかけに、初めて医師という仕事に触れ、人の人生の大切な場面に寄り添える仕事であることに魅力を感じ、医師を志すようになりました。病気やけがは、本人だけでなく家族の生活や気持ちにも大きな影響を与えます。そうしたときに、医学の知識や技術を用いて支えるだけでなく、不安を抱える人に安心を届けられる存在になりたいと考えるようになりました。もともと子どもの成長や発達に関心があったことから、小児科や母子保健の分野に自然と惹かれていきました。
実際に医療の現場に身を置く中で、一人の患者さんを診ることの大切さを実感する一方で、健康には生活環境や地域社会、制度や政策といったさまざまな要因が複雑に影響しており、個人の意識や努力だけでは解決できない課題も多いことを痛感しました。どのような環境に生まれ育ち、どのような支援を受けられるかは、健康に大きく影響します。そうした経験を通じて、環境や社会の仕組みに働きかけることで健康格差の是正につなげたいと考えるようになり、臨床だけでなく公衆衛生や国際保健にも関心を広げるきっかけとなりました。医師という仕事は、目の前の一人を支えることと、社会全体の健康をより良くしていくことの両方に関われる点に、大きな魅力があると感じています。
現在研究している内容について
私は、小児科医としての経験を基盤に、母子保健を主な専門として、特に新生児や子どもの健康を守るための研究に取り組んでいます。これまで、日本国内だけでなく、ラオスなどの海外の低資源地域においても、出産直後の赤ちゃんに必要なケアの質をいかに高めるか、また、それを担う保健医療人材をどのように育成し支えるかをテーマに研究を進めてきました。近年は、スマートフォンなどのデジタル技術を活用し、医療者が継続的に学びながら、現場で実践力を高められる仕組みづくりにも力を入れています。さらに、地域住民の参加を通じて、必要な保健医療サービスの利用を促進する取り組みにも関わってきました。私の研究の特徴は、単に新しい知見を得るだけでなく、実際の現場で役立ち、地域の健康向上につながる実装を重視している点にあります。また、健康は医療だけで決まるものではなく、生活環境や社会の仕組み、地域とのつながりにも大きく左右されます。そのため、個人への医療と社会全体へのアプローチの両方を視野に入れながら、より良い保健医療のあり方を探る研究を続けています。
公衆衛生学分野教授としての抱負
公衆衛生学教室を、学生、若手研究者、地域社会がつながりながら学び合える、開かれた場にしていきたいと考えています。公衆衛生学は、病気の治療だけでなく、病気を予防し、人々が健康に暮らせる社会の仕組みを考える学問です。その魅力を、授業や研究を通じてわかりやすく伝え、学生の皆さんに「医療をもっと広い視野で考える面白さ」を感じてもらえる教室にしたいと思っています。
また、研究面では、国内外のフィールドで培ってきた経験を生かし、地域の課題に根ざしながら、国際的な視点も持った実践的な研究を進めたいと考えています。岐阜という地域を大切にしつつ、行政、医療機関、地域住民、多職種の方々とも連携し、現場に役立つ知見を生み出していきたいです。さらに、教室のメンバー一人ひとりが自分の関心や強みを伸ばし、安心して挑戦できる雰囲気づくりも重視したいと考えています。互いに学び、支え合いながら、新しい公衆衛生学の価値を発信できる教室に育てていきたいです。
医師を目指す学生へのメッセージ
医師を目指す皆さんには、ぜひ「目の前の一人の患者さんを大切にする視点」と「社会全体の健康を考える視点」の両方を持ってほしいと思います。医師という仕事は、病気を治すだけでなく、人の不安に寄り添い、その人らしい生活を支える、とても奥深い仕事です。そして、その背景には家庭、地域、経済、制度など、さまざまな要因が関わっています。だからこそ、医学部で学ぶ時間には、教科書の知識だけでなく、社会や地域に目を向ける姿勢も大切にし、視野を広げていってほしいと思います。
学生のうちにしかできない挑戦もたくさんあります。興味を持ったことにはぜひ一歩踏み出し、研究、地域活動、海外経験などにも積極的に触れてみてください。すぐに答えが出なくても、その経験は必ず将来の糧になります。医師として成長していくうえで大切なのは、知識や技術だけでなく、学び続ける姿勢と、人への想像力です。岐阜大学での学びが、皆さんにとって将来の医療を考える豊かな土台になることを願っています。
略歴
| 平成19年3月 | 山梨大学医学部医学科 卒業 |
|---|---|
| 平成19年4月 | 埼玉医科大学総合医療センター 初期臨床研修医 |
| 平成21年4月 | 国立成育医療研究センター 総合診療部 研修医 |
| 平成24年5月 | 国際協力機構(JICA) 長期専門家 ラオス国母子保健統合サービス強化プロジェクト |
| 平成27年6月 | 国際協力機構(JICA) 短期専門家 ラオス国保健セクター事業調整能力強化フェーズ2プロジェクト |
| 平成28年9月 | ロンドン大学衛生熱帯医学大学院 理学修士課程(疫学)修了 |
| 平成28年9月 | 世界保健機関(WHO)ラオス国事務所 母子保健コンサルタント |
| 平成29年4月 | 帝京大学大学院公衆衛生学研究科 助教 |
| 平成31年4月 | 山梨大学大学院総合研究部附属出生コホート研究センター 助教 |
| 令和2年3月 | 帝京大学大学院公衆衛生学博士課程 修了 |
| 令和5年1月 | バーネット研究所(オーストラリア)研究員 として海外出張 |
| 令和5年4月 | 山梨大学大学院総合研究部医学域疫学・環境医学講座 助教 |
| 令和6年4月 | 日本学術振興会 海外特別研究員(受入れ機関:バーネット研究所) |
| 令和8年4月 | 岐阜大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野教授 バーネット研究所客員研究員 |
