VOICE~岐大医学部から~
退職教授からのメッセージ
内科学講座
総合診療科・総合内科学分野
森田 浩之 先生
『VOICE-岐大医学部から-』第138回は、令和7年3月をもって退職となった、医学部医学科 内科学講座 総合診療科・総合内科学分野 森田 浩之 先生にお話を伺いました。
教員生活を振り返って
1984年に岐阜大学旧第3内科に入局し、岐阜県立下呂温泉病院など4つの病院で内科研修後、1989年に岐阜大学医学部附属病院に戻り、1993年7月に旧内科学第3講座に助手として採用されました。31年7か月間、岐阜大学に教員として勤めさせていただいたことになります。助手になったばかりの頃は、自分の研究や診療に手一杯の状態で、なかなか教育まで行き届きませんでした。教育に関心が持てるようになったのは1999年8月に旧病院の総合診療部に異動してからで、総合診療部外来で学生が同意取得後に初診患者の病歴を紙カルテに記載する実習を行うことにしてからです。見学実習と違い実際の患者の診療をするわけですから、学生も真剣に取り組みます。数回この実習を繰り返すと、学生の診断力がかなりアップすることが分かりましたので、診療参加型臨床実習の重要性を実感することができました。コロナ禍で一時臨床実習を中断しましたが、現在は外来・入院とも学生に患者の医療面接と電子カルテに記載してアセスメントもしてもらっています。加えて、研修医や総合診療や内科専攻医を交えた病棟カンファレンスでは、彼らに患者のプレゼンテーションや診断・治療計画を発表してもらうことで、彼らの医師としての成長を感じることができる貴重な時間でした。
次世代へのメッセージ
「良い医師になろう」という強い気持ちが大切に思います。それがいつまでも続くことができれば自己研鑽に繋がり、生涯に亘って医師として成長ができるように思います。医師の成長曲線は若い頃が急峻で、次第に成長は鈍化してゆきます。つまり、研修医、専攻医の時期がとても大切で、この時期にどのような研修をするかによって医師としてのレベルが決まってしまうように思います。心身の健康が最も大切ですが、それが許容できる範囲でできるだけ広く深く診療に取り組むと良いと思います。この時期に自分の診療キャパシティを広げて、自分の限界を知っておくことが将来に繋がってゆきます。どの専門領域でも良いので、1つを選んで専門医を取得しましょう。専門研修を修了して専門医試験に合格した際には大きな自信になると思います。今後の日本の高齢化と人口減少を考えると、内科では少なくとも2つのサブスペシャリティ専門医を目指して取得しておくと良いでしょう。一方、診療の広さと多様性を特徴とする総合診療専門医も、今後さらに魅力的な存在になってくると思います。「疾患を診る」のではなく「患者を診る」、特定の臓器を診るのではなく全身を診る、現在の患者のことだけでなく患者の立場に立って将来を見据えた地域医療を推進できる総合診療専門医は今最も社会ニーズが高く将来性のある専門医の1つだと考えています。35歳の時に留学の機会があり、2年間家族で米国ミズーリ州の田舎で暮らしました。2年間日本で生活するのと米国で生活するのとどちらが家族にとって良いだろうと考えた末の決断でしたが、結果的にその経験は家族にとっても大きな自信になっています。多くのスポーツ選手が海外での活動で大きな成果を挙げているように、若い医師の皆さんも海外留学を積極的に考えてみてはどうでしょうか。
略歴
1984年3月 | 高知医科大学医学部医学科卒業 |
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1984年5月 | 岐阜大学医学部附属病院医員(研修医)(第3内科) |
1984年12月 | 岐阜県立下呂温泉病院臨床研修医師(内科) |
1985年4月 | 長浜赤十字病院医師(内科) |
1987年4月 | 澤田病院医師(内科) |
1989年6月 | 岐阜大学医学部附属病院医員(第3内科) |
1993年7月 | 岐阜大学医学部助手(内科学第3) |
1995年2月 | 米国ミズーリ大学医学部研究員(内科) |
1997年3月 | 岐阜大学医学部附属病院助手(第3内科) |
1999年4月 | 岐阜大学医学部附属病院講師(第3内科) |
1999年8月 | 岐阜大学医学部附属病院助教授(総合診療部) |
2004年4月 | 岐阜大学大学院医学系研究科助教授(総合病態内科学分野) |
2014年6月 | 岐阜大学大学院医学系研究科教授(総合病態内科学分野) |
2021年4月 | 岐阜大学大学院医学系研究科教授(総合診療科・総合内科学分野) |
学会役員
日本内科学会(評議員) | |
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日本内分泌学会(評議員) | |
日本糖尿病学会(評議員) | |
日本老年医学会(評議員) | |
日本リウマチ学会(評議員) | |
日本ステロイドホルモン学会(評議員) | |
日本プライマリ・ケア連合学会(代議員) | |
日本病院総合診療医学会(評議員、理事) | |
日本遠隔医療学会(理事、副会長) | |
日本医療研究開発機構 医工連携・人工知能実装研究事業(プログラムオフィサー) |