VOICE~岐大医学部から~
薬理病態学からのメッセージ
医学系研究科 生命原理講座
薬理病態学分野
教授 兵藤 文紀 先生
研究で使用している最新の
「in vivo DNP-MRI装置」
『VOICE-岐大医学部から-』第132回は、令和5年12月に就任されました、医学系研究科 生命原理講座 薬理病態学分野 教授 兵藤 文紀 先生にお話を伺いました。
現在研究している内容について
薬理病態学分野では、量子イメージングと呼ばれる新しいMRI技術を用いて、これまでの形態的な画像診断から機能・代謝に基づく診断や薬の評価を目指した研究を行っています。近年、これまでの原子や分子といったナノザイズを取り扱う分子生命科学から、より小さい電子や陽子などの量子を用いて生命を議論する量子生命科学が着目されており、量子技術により、従来不可能であった極微少環境の計測や、超高感度化など革新的な技術の創出や新たな産業を生み出すことが期待されています。私たちは、量子技術を使って私たちの体の中で細胞がどう働いているか、病気になったときはどのように変わるのかを見ることができるイメージング技術の開発をしています。特に、様々な病気への関与が知られている酸化還元(レドックス)状態を可視化する方法の開発や、体内の代謝をリアルタイムに検出する方法の開発に挑戦しています。これらの研究を通じて、がんや生活習慣病などについて、新しい診断・薬効評価法へ展開することで医療や健康寿命の進展に貢献したいと考えています。
薬理病態学教授としての抱負
最先端の研究を推し進めるためには、しっかりとした基礎知識と技術の習得が欠かせません。私たちの研究室では、新しく参加してくださる学生や大学院生の皆さんに、まずはこの基礎知識をしっかりと身につけていただきます。具体的には、生物学、化学、物理学などの基本的な科学知識から、実験技術、データ解析方法まで、幅広い分野の基礎を固めることに重点を置いた教育を行います。そして、その基礎知識を土台に、最新の研究成果を生み出すだけでなく、実際の臨床現場にも役立てることができる、いわゆるトランスレーショナルリサーチ(実用化研究)を推進していきます。
私たちの目指す研究は、医学のみならず、獣医学、薬学、工学、理学といった様々な分野の研究者と協力し、新しい知見を生み出す融合研究です。さらに、国内だけにとどまらず、世界中の研究者や企業との共同研究も積極的に行い、国際的な研究ネットワークを構築しています。このような多角的なアプローチを通じて、医療科学の発展に貢献したいと考えています。
大学院生はもちろん、研究に興味がある学部生の皆さんにも、私たちの研究室で一緒にサイエンスを通じて充実した研究生活を送っていただきたいと思っています。研究に少しでも興味がある方は、ぜひ一度、研究室のドアを開けてみてください。
医師を目指す学生へのメッセージ
薬理学は、薬物が生体に与える影響を科学的に解析する学問領域であり、薬の基本的な働きや副作用のメカニズムを深く理解することを目的としています。この分野は、医薬品がどのようにして病気を治療するのか、どうやって体内で効果を発揮するのか、そして不要な副作用が生じる原因は何かといった、薬物の作用機序に関する包括的な知識を身につけます。これにより、基礎医学の知識を臨床医学の現場へと繋げる橋渡しの役割を果たし、治療薬の適切な選択に不可欠な役割を担っています。
将来、医師として活躍するためには、薬に関する知識の習得も不可欠です。そのため、薬理学の学びを通して、薬物治療の効果を最大限に引き出し、最良のケアを提供できるようになっていただけると嬉しいです。
略歴
平成 7年 4月 | 名城大学薬学部薬学科 入学 |
---|---|
平成11年 3月 | 同上 卒業 |
平成11年 4月 | 名城大学大学院薬学研究院 薬学専攻 博士前期課程 入学 |
平成13年 3月 | 同上 修了 |
平成13年 4月 | 九州大学大学院薬学府 創薬科学専攻 博士後期課程 入学 |
平成16年 3月 | 同上 修了 |
平成16年 4月 | 九州大学大学院薬学研究院21世紀COEプラグラム 学術研究員 |
平成16年12月 | Radiation Biology Branch National Cancer Institute/National Institutes of Health, USA(米国国立衛生研究所) Postdoctral Fellow |
平成16年 1月 | 九州大学 先端融合医療レドックスナビ研究拠点 特任助教 |
平成22年 4月 | 九州大学 先端融合医療レドックスナビ研究拠点 准教授/グループ長 |
平成29年 4月 | 岐阜大学大学院医学系研究科 先端画像開発講座 特任准教授 |
令和 4年4月 | 岐阜大学 高等研究院 准教授 |
令和 5年12月 |
岐阜大学 医学系研究科 薬理病態学分野 教授 東海国立大学機構 One Medicine創薬シーズ開発・ 九州大学 大学院医学研究院 特別講師 |