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第1回 虐待セミナーを実施しました

11月3日(水・祝)、本学のサテライトキャンパスで『第1回 虐待セミナー』を開催しました。2020年7月に発足した岐阜大学大学院医学系研究科 虐待に関する救急医学講座がはじめて企画、運営した医療/福祉従事者対象のセミナーです。

母講座である救急災害医学分野、小倉真治教授の開会挨拶に始まり、

来賓の柴橋正直市長にもご挨拶賜りました。

前半のシンポジウムでは医学部附属病院 地域医療医学センター教授・牛越博昭先生が座長を務め、3名の演者に講演頂きました。

まず、岐阜県総合医療センター ソーシャルワーカー ・鹿野義人先生に『児童虐待防止医療ネットワーク事業について』という岐阜県から委託されている事業についてお話頂き、同ネットワークが行っている県内多施設連携の現状・課題やセミナーについて理解を深めることができました。

続いて岐阜市民病院、小児科部長・篠田邦大先生に『小児虐待を見逃さないために』というテーマで、主に医療現場で小児虐待を見逃さないためのポイントをレクチャーして頂きました。虐待は慢性疾患であるという概念や、「何かをみて見ぬふりをした時点でネグレクトである」という印象的なメッセージも発して頂きました。

最後に乳幼児ホームまりあ 副院長 産前産後母子支援事業室長・藤野育代先生に『DV対策と小児虐待の関連』について教えて頂きました。乳児院についての基礎知識や、予期せぬ妊娠やDVと虐待との密接な関係についてお話頂きました。

総合討論では多職種がどのように連携するかについて、具体的には、岐阜市民病院から乳児院まりあに入所した児のフォローアップ体制、乳児院がある岐阜市と中津川市以外の対応、児童相談所への通告の注意点などについて質疑、議論が行われました。

後半の基調講演は当講座、吉田省造特任教授が座長を務め、

聖十字病院・岡琢哉先生に『児童精神医学からみる小児虐待』というテーマでお話頂きました。

児童精神医学の定義から始まり、「氏と育ち」というこの分野における長きにわたるテーマについて掘り下げて頂きました。「氏」とは生来的特性・遺伝のことで、「育ち」とは環境要因のことです。例えば、自閉症スペクトラムが「育ち」ではなく「氏」であるという周知の事実があるにも関わらず、発達障害の子は親の育て方が悪いという誤認識がいまだにされています。
マルトリートメントは子供、養育者、社会という3つの輪どこかに切れ目が生じて発生するという話や、発達障害があることで子どもの育てにくさ、結果的にマルトリートメントの連鎖が続いてしまうという問題があります。その連鎖をとめるための社会からの支援は継続的に行われるべきという提唱がなされました。最後に、児童精神という分野のニーズは多いが医療資源の供給が少ない分野であり、病院治療のみならず地域診療としての岡先生の取り組みを紹介頂き、60分の実りある講演を締めてくださいました。

講演終了後に岐阜市病院事業管理者・冨田栄一先生より閉会の挨拶を頂き、岐阜県において児童虐待やDVに対するますますの取り組みを期待するメッセージとともに会はお開きとなりました。

文責:岐阜大学大学院医学系研究科 虐待に関する救急医学講座 特任助教(前職) 安田 立



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