診療内容

岐阜大学医学部附属病院 形成外科 診療内容

形成外科の診療内容は大きく分けて下記の11項目に分類されますが、現在当科では美容外科を除く10項目に対して診療を行っています。特定の臓器を対象とせず、 体表・形態に関連した疾患を対象としています。

こちらに掲載の他にも、原因や場所はなんであれとにかく体表・形態の異常は当科で治療を行っています。加齢性の眼瞼下垂症などは年と思って諦めている場合がありますが、 保険診療で治療可能な場合もありますので是非当科にご相談ください。

※ただし、一部当院ではまだ対象としていない疾患や手術法が若干異なる疾患もありますので、詳細につきましては担当医に直接ご相談ください。


新鮮外傷・新鮮熱傷

体表のケガとヤケドのことです。外科系の診療科でしたらまず問題なく治療・処置はしてもらえると思いますが、それを専門にして最善の治療を目指すのが形成外科です。

※日本形成外科学会ホームページ:けが(外傷)
※日本形成外科学会ホームページ:やけど(熱傷)

顔面骨骨折および顔面軟部組織損傷

顔の骨を含む顔のケガのことです。顔の骨は手足の骨とは異なり、見た目も重要な治療対象となりますので当科で治療を行っています。また顔にはまぶた、唇、鼻 など特殊な形や機能を持つ部位があり、顔面神経や涙管(なみだの通り道)など大切なものが浅い部位にあります。従って顔をケガすると傷跡が目立つのはもちろんですが、浅いケガでも機能的な障害が生じることがありますので当科で治療を行っています。ケガなどが原因で鼻が低くなってしまった方には「隆鼻術」も行っています。

頬骨骨折

右頬骨の複雑な骨折。顔面の目立ちにくい場所を切開し、骨折部を整復・固定

隆鼻術

外傷で鼻背が凹んだ患者。鼻背に軟骨を移植して鼻を高く、鼻背が真っ直ぐになるように修正

内眼角形成術

外傷で左右の目が離れたように見える患者。目頭の切開と皮弁を用いて左右の目が内側に寄るように修正

※日本形成外科学会ホームページ:顔の骨の骨折

唇裂・口蓋裂

先天異常の一つでくちびる、はぐき、口蓋(口の中の天井部分)に割れ目が残ってしまった病気です。当院では唇裂のみ治療を行っています。小さい頃に手術を受けた方で傷跡が目立つ場合にも、修正が可能な場合がありますので担当医にご相談ください。

※日本形成外科学会ホームページ:口唇口蓋裂とは

手、足の先天異常・外傷

専門は整形外科の手の外科になりますが、当科でも一部診療しています。

合趾症

先天的な足趾の癒合。皮弁と皮膚移植を併用し、癒合していた趾を分離

※日本形成外科学会ホームページ:合指症

その他の先天異常

・陥没乳頭
・臍突出症、臍ヘルニア
・漏斗胸
・尿道下裂
・頭蓋縫合早期癒合症
・先天性眼瞼下垂
・小耳症

生まれつきの様々な体表・形態の異常に対する治療を行っています。 生まれつきであっても、治療可能な異常はいろいろあります。まずは担当医にご相談ください。

岐阜大学においては耳鼻咽喉科から発生した経緯があるため、耳の先天異常を比較的得意としています。現在治療を行っている耳の先天異常と しては、形が不完全だったり、ほとんど欠損していたりする「小耳症」、曲がっている「折れ耳」、立ち上がっている「立ち耳」、一部皮下に 埋まってしまっている「埋没耳」などがあります。特に小耳症は「永田法」による再建術を行っています。

漏斗胸

先天的な胸部の陥凹。胸腔内に金属製の棒を入れて修正(Nuss法)

臍ヘルニア

いわゆる“デベソ”。皮弁を用いて修正(梶川法)

副耳

先天的な耳の形態異常。切除して縫合

埋没耳

先天的に耳の頭側が埋没。皮弁を用いて耳を引き出した

立ち耳

先天的に耳が立って見える。耳介軟骨の形態異常が原因なので、耳の後面を切開して軟骨の形成術を施行

※日本形成外科学会ホームページ:生まれつきの病気

母斑・血管腫・良性腫瘍

良性のアザやできものであっても、顔など見た目に影響する場所においては当科での治療を希望される患者さんが多くみえます。 いわゆるイボやホクロは専門的に言えば皮膚腫瘍(悪いものではなくてもできものは腫瘍といいます)といって保険診療で治療可能な疾患です。 もちろん中には皮膚の悪性腫瘍が隠れている場合がありますので、慎重な治療を心がけています。

皮膚腫瘍1

腫瘍を切除し、皮弁を用いて再建

皮膚腫瘍2

腫瘍を切除して縫合

皮膚腫瘍3

腫瘍を切除し、皮弁を用いて再建

※日本形成外科学会ホームページ:母斑とは
※日本形成外科学会ホームページ:血管腫・血管奇形
※日本形成外科学会ホームページ:皮膚腫瘍 概要

悪性腫瘍およびそれに関連する再建

胃の悪性腫瘍などで胃を切除した後には、断端同士などをつないだりすることによって再建が可能です。しかし悪性腫瘍切除に伴う 体表の欠損が大きい場合や、口の中や顔の悪性腫瘍では切除後に縫い閉じることができないことが多々あります。このような場合には 当科が体の他の場所から組織を移植する「再建術」を行っています。そのような場所としては頭や首(耳鼻咽喉科・脳神経外科領域)、手足(整形外科領域)、乳房(乳腺外科領域)、おなかや背中(消化器外科・泌尿器科・産婦人科領域)と全身に及びます。

舌再建

舌癌の切除により、舌の半分が欠損。大腿からの遊離皮弁(血管吻合を用いた組織移植)で再建

背部再建

背部悪性軟部腫瘍の切除により、背部に広範な組織欠損。対側からの筋皮弁(逆行性広背筋皮弁)で再建。

※日本形成外科学会ホームページ:軟部悪性腫瘍

瘢痕・瘢痕拘縮・肥厚性瘢痕・ケロイド

瘢痕とはいわゆる「傷跡」のことで、大まかにいえば突っ張りがあると「瘢痕拘縮」、膨らみや赤みが強いと「肥厚性瘢痕」、 さらに元の傷跡より大きくなってしまうと「ケロイド」とその程度によって分けられます。飲み薬、貼り薬、注射などの保存的治療と、 適宜手術を組み合わせた治療を行っています。傷跡を目立たなくする傷跡なおしも保険診療で行っていますので一度ご相談ください。

瘢痕拘縮形成術1

瘢痕拘縮形成術2

瘢痕拘縮形成術3

瘢痕拘縮形成術4

手背熱傷による拘縮(突っ張り)で“握り”ができなくなった患者。皮弁と皮膚移植を併用した手術で“握り”が可能になった

耳介ケロイド

※日本形成外科学会ホームページ:瘢痕(傷あと総論)
※日本形成外科学会ホームページ:ケロイド・肥厚性瘢痕
※日本形成外科学会ホームページ:瘢痕拘縮

褥瘡・難治性潰瘍

褥瘡は「床ずれ」とも呼ばれ、体の骨が突出した部分で皮膚が自分の体の重さで圧迫されることにより血流が不十分となり壊死、潰瘍を生じたものです。 通常は麻痺や老衰のために自分で体を動かせない方に見られます。ベッドや生活習慣の改善と、軟膏や被覆材による保存的治療をまず行います。 ただし適応のある方には積極的に手術的治療を選択して、早期治癒を目指しています。 それから長期にわたり治らない皮膚の傷を「難治性潰瘍」といい、糖尿病や足の血管の病気の方で多く見られます。こちらの治療も当科で行っています。

褥瘡1

いわゆる“床ズレ”。壊死した組織を切除して、皮弁(穿通枝皮弁)で再建

褥瘡2

壊死した組織を切除して、皮弁(後大腿皮弁)で再建

頭部難治性潰瘍

脳神経外科手術後の難治性潰瘍・人工骨露出。感染・壊死した組織を切除し、皮弁と皮膚移植で再建

※日本形成外科学会ホームページ:とこずれ(褥瘡)
※日本形成外科学会ホームページ:難治性潰瘍(下腿潰瘍中心に)

美容外科

大変申し訳ありませんが、現在当院では治療対象外となっております。他院美容外科でのトラブルに対しても対応しておりません

※日本形成外科学会ホームページ:美容外科

その他

・顔面神経麻痺
・顎変形症
・顔、まぶたの疾患(進行性顔面片側萎縮症、後天性眼瞼下垂)
・性同一性障害、爪・毛などの疾患(毛巣洞、陥入爪、巻き爪、禿髪)
・義眼床手術
・腹壁瘢痕ヘルニア
・リンパ浮腫
・腋臭症

睫毛内反症

下眼瞼のいわゆる“さかまつ毛”。修正術を施行

限局性強皮症

皮膚病による下顎部の陥凹。脂肪移植で修正

※日本形成外科学会ホームページ:その他