岐阜大学大学院医学系研究科・医学部 地域医療医学センター HOME サイトマップ お問い合わせ
NEWS センター紹介 STAFF紹介 活動内容 カリキュラム 研修医の声 勤務医の声 LINK
センター概要
センター長紹介
センター機構図
センターに関する論文
センター紹介

センターに関する論文

 

日本医事新報(平成19年12月15日掲載)
地 域医療確保のための6つの発想の転換
-岐 阜大「地域医療医学センター」設立-

近藤  直実
岐阜大学大学院医学系研究科長・医学部長
岐阜大学大学院医学系研究科・医学部
地域医療医学センター センター長
岐阜大学大学院医学系研究科・医学部小児病態学 教授
〒501-1194 岐阜県岐阜市柳戸1番1


はじ めに
近年,小児科医,産科医の不足をはじめ医師の偏在が大きな社会問題になっており,国民の健康と生命を守るため早急な対策が求められている。岐阜大学大学院 医学系研究科・医学部では,この現状に対する独創的かつ画期的対策を強力に進めているので紹介する。

現状 認識を踏まえたセンター構想
医 師は,①地域空間的,②専門診療科的(特に小児科,産科など),③医療機関規模的,④医学研究者への道―の4つの意味で偏在している。その理由は,図1に 示したように種々あると思われる。偏在の解消に向けて,従来からさまざまな立場でそれなりの努力がなされてきたが,十分な解決には至っていない。
岐阜大学大学院医学系研究科・医学部としても,これまでそれぞれの立場で努力を重ねてきたが,大学として何らかの抜本的な方策を進める必要性を痛感し熟慮 していた。
平 成18年8月,地域医療に関する関係省庁連絡会議が「新医師確保総合対策」を取りまとめ,対策の重要な柱の1つとして,岐阜県のように医師の不足が特に深 刻と認められる県において,奨学金の拡充など実効性ある医師の地域定着策を条件に,最長10年間,医学部入学定員を10人増員してよいという通達があっ た。また,岐阜県からも寄附講座の打診があり,社会情勢からも,筆者はこれらを千載一遇の機会と捉えて,平成18年9月以降の教授会議に構想案を提出した (センターの名称は当初,「環境地域総合医学医療センター」としていた。筆者は現在も,その役割を考えれば,「環境」という言葉をぜひ入れるべきと考えて いる)。学長,役員,県知事,県当局のご指導等,また文科省への幾度かの提案により,同教授会議の承認を得て平成19年2月,3月,県からの寄附講座も包 括した岐阜大学大学院医学系研究科医学部地域医療医学センターの設立が決定した(図2)。

図1

図2


6つ の発想転換
地域医療の課題の真の解決のため,筆者は6つの独創的発想に至った。(表1)
(1) 医師の確保ではなく医療の確保である。
求 められるのは医師の確保ではなく医療の確保であり,そのための速効的個別対応が必要である。これらは中長期的対策であると同時に,短期的解決策でもあり, 明日からでも可能なことは少なくない。医学部入学定員が微増するにしても,医師数はすぐに増加するものでは無く,現状の医師数で地域等による偏在を解消し て医師を確保することは不可能である。限られた医師に十分活躍してもらい(但し,医師のQOLも保ちながら),医師の偏在を解消して医療を確保することを 目標にすることが重要である。
例えば,A地区のa病院,B地区のb病院で消化器外科医が一人ずつ不足しているとの大学への要請に対して外科医を一 人ずつ派遣できない場合,一人の外科医が定期的に手術する曜日と時間を決めて,両病院で活躍するシステムを作る。すなわち,専門医や医師団を必要に応じて 定期的に派遣し,その前後は常勤医で管理する。逆に特定の手術は拠点病院で予約手術を行う。実際に岐阜県では高山地域に増員された小児科医一人(分)が, 3つの病院で活躍している。このほか,短期的解決策としては,当直体制の改善(当直の集約化,開業医の積極的参加など)やヘリコプター等を駆使した病院連 携,5つの医療圏域における各地域での機能の集約化,また,小児救急医療に関する住民教育(パンフレット配布),電話応対システムを取り入れた救急医療体 制の確立など,個別的および大局的視野からの対策が必要である。

表1

(2) 教育,研究があり,そして医療確保がある。
(3) 疾患を診るのではなく,疾患を持つ患者を診るのであり,さらにその患者が生活している地域環境を診るという教育,研究そして医療。
(4) 地域医療・地域医学の重要性を認識させ興味を持たせる教育。
医 師がノルマ的に地域に派遣されるのでは,全く解決にならない。特に若手医師に地域医療の重要性を認識させ興味を持ってもらうためには,地域医療の重要性は 勿論,その必要性を地域医療・地域医学の教育・研究を通して十分に理解してもらうシステム・カリキュラムが必要であり,それらによる「意識改革」が必要で ある。
例えば,高血圧の患者に対して,都市の病院の外来で患者を診て投薬と生活指導をする医療に対して,地域の医療機関をベースに,その地域での 高血圧の発症要因を研究して対策を立てたり,遺伝子学的背景が存在する可能性を明らかにすることもできる。あらゆる疾患について,後者のような研究を通し た治療がより重要であることは,論を俟たない。疾患を診るのではなく,疾患を持つ患者を診るのであり,さらにその患者が生活している地域環境を診るという 教育,研究そして医療が求められる。さらに,社会人大学院生として,そうした英論文を発表するなどして医学博士を取得することも重要と思われる。これら は,長期的対策としての卒前研修教育のみならず直ちに成果が出る卒後研修教育における対策として,同時進行で進めることが必須である。
(5) 横断的総合臨床医の育成。
診 療科目による縦割りの医療ではなく,地域でニーズの高い診療科目を横断的・総合的に診療できる臨床医の育成が必須である。例えば,小児を診られる内科医, お産のできる小児科医(周産期医),循環器内科医あるいは内分泌内科医へのニーズは低くない。特に若手を対象にそうした医師を育成していくという発想が, これからは重要ではないか。こうした方向性は同時に産科医不足の解消にも大いに貢献できると思われる。
(6) 地域医療医学センターの設立。
以上の目標を実現するため,岐阜大学大学院医学系研究科・医学部が平成19年4月に設立した「地域医療医学センター」について,その特長を次項で述べる。

「地 域医療医学センター」の設立
本 センターの組織的な特長(図2)は,医学系研究科・医学部のほぼ全分野(特に臨床系)が多かれ少なかれ関与して,医学部の濃縮版のような機能を取り入れて いることである。教育,研究があって医療があるという考え方で,しかも地域を向いている(図3)。「医療センター」ではなく「医療医学センター」という名 称としたのはそのためである。センター長,副センター長の下に配置した教授4~5人,助教5~6人総勢10数人が,母体分野と併任しつつ専任的に教員とし て活動している。各教員は母体分野と密に連携をとり,それ以外のほぼすべての診療科が協力分野として参加している(表2)。従って,人事面や教育,研究, 診療それぞれにおいて各診療分野との協力体制を確保している。
平成19年11月にはさらに,センターに岐阜県の寄附講座が設置された。
本 センターの機能上の特長は,表3,4および図4に示した通りである。医師の確保ではなく医療の確保を目指している。地域医療は単独ではなく教育,研究の延 長線上にあるということが基本理念である。疾患を診るのではなく,疾患を持つ患者を診るのであり,さらにその患者が生活している地域環境を診るという教 育,研究そして医療を行っている。
最も重要なポイントは,医学教育と研究を通して地域医療の重要性を認識し興味を持ってもらうことであり,医療を 通した社会貢献における「意識改革」である。その上で,縦割り診療ではなく,地域でニーズの高い横断的総合臨床医を,地域の病院に指導医や専門医と研修 医・若手医師を定期的,組織的かつ継続的に送り込み,体験を通じて育成するシステムを構築する。これにより早期に地域を活性化することを目指している。そ のモデルケースを図5に示す。
医学教育システムについては,医学生が入学後の早いうちに目的意識をしっかり持って勉学に励めるように複数のコース カリキュラムを設定して,コースの変更も可能な状態とし,学生に選択してもらうことを前向きに検討している。具体的には,地域医療人育成コース卒前卒後一 貫カリキュラムや,医学研究者育成(大学院進学)コースカリキュラム,研究者枠推薦入試などを検討している。その一貫として,平成20年度の入学者につい て10人の地域医療人育成枠推薦入試を開始した。21年度はさらに定員の拡大を検討している。
さらに,医学教育の基本組織となる「医学部教育ユニット」の検討も進めている。

図3

表2

表3

表4

図4

図5


地域 医療対策の全体像
地域医療対策は地域全体で,しかもさまざまな立場(行政,医師会,病院,大学,住民など)のメンバーが協力して対応することが必須である。
  医師数増加対策としてはまず医学部定員増は重要である。それに加えて,特に医療機関の規模的偏在が2次・3次医療に携わる若手・中堅勤務医の疲弊を引き起 こしている現状を踏まえ,開業規制や条件制(夜間診療など),あるいは開業より良い労働環境を2次・3次医療機関の勤務医へ与えることが重要である。
医 療水準の担保,学会活動や論文発表など学問的興味を満たすことはもちろん,経済的にも報われる労働環境を整備しなければならない。医師の偏在がこのまま進 めば,日本の医療水準の低下は避けられない。さらに,2次・3次医療機関と1次医療機関の一方的,形だけの連携協力ではなく,真の連携協力体制の確立と医 療機関の集約化が求められる。

おわ りに
岐阜 大学大学院医学系研究科・医学部における地域医療確保の取り組みを紹介した。筆者らのスローガンは,地域医療を含めて,大学として「高度な研究の推進と地 域医療の確立,そしてそれらに基づく人材育成」を行っていくことであり,高度な研究推進にも力を尽くし,成果を挙げていることを記して稿を終る。

本稿は,日本医事新報4364:80-85(2007)に時論として掲載された筆者の論文を日本医事新報社の許可を得て,一部改変して転載しております。

 

HOMENEWSセンター紹介STAFF紹介活動内容カリキュラム研修医の声勤務医の声LINKお問い合わせ
Copyright(c)2007 Center for Regional Medicine All Right Reserved.