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研修医手記

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岐阜県総合医療センター 研修医1年目 三神 智恵 (part41)

kensyuui-41.jpg ■あっという間の半年でした

 医師として働き始めて、はや半年が過ぎました。あまりに忙しく、必死に過ごした半年であり、今までの人生のどの時期よりも早く感じました。今回、寄稿文を書く機会をいただき、忙しいばかりで、なかなか振り返ることのできなかった研修医生活を見直す機会となりました。正直、うまくできていないと思うことの方が多い半年でありましたが、ありのままを書かせていただきます。

 

■当直について

 研修医のメインの仕事といえば、当直業務ではないでしょうか。一年目の最初に割り当てられた仕事は、患者さんの問診、身体診察をとることであり、その結果を2年目の先生に共有してどんな検査をすべきか話し合います。当直は自分の判断が患者さんの治療方針に直結する分、悩むことも多くなります。
 まず最初に悩んだことは、自分の問診、身体診察で検査をすべきか、しなくても良いかが決まってしまう点です。国家試験では、必要な情報は漏れなく記載されており、正しい身体所見が書かれていますが、当直ではそれらを自分が聞き取り正常か異常か見極めなければいけません。「肺の音は綺麗だったんだよね?」と聞かれても「自分の聴診に自信はないですが、聞く限りでは…。」と曖昧にしか答えることができず、不甲斐なく、とても申し訳なく思ったことを覚えています。不安に思うたびに動画サイトで異常な音を聞いたり、本で正しい身体所見を調べたりしました。正しい所見を取れた時は嬉しく思いますが、いまだに自信を持つことはできず、日々勉強の毎日です。
 次に悩んだことは、コミュニケーションです。臨床現場ではコミュニケーションが最も大事であると特に最近実感しています。問診では患者さんとうまくコミュニケーションを取れないと信頼を失ったり、正確な情報を聞き出せなかったりします。検査や治療方針を決めるにしても、患者さんの理解を得る必要があります。また、スムーズに診療を進めるには、他の病院スタッフとの円滑なコミュニケーションが必要です。自分がどこまでできるか、どこからができないかを把握して、それをはっきり伝えることも大切です。私自身、コミュニケーションについては毎回悩んでおり、あの時些細なことでも相談しておけばよかった、この仕事は自分がやるべきだった、逆にここは任せるべきだった、など反省の多い毎日です。患者さんの状態をうまく伝えることも難しく、もっと簡潔にわかりやすく話すにはどうしたらよかったのかと悩み、迷惑をかけたなと落ち込みます。こればかりは、反省を次に生かすようにして、経験を積んでいくしかないことだと思います。
 また、当直をしていると自分は医師になったのだと実感させられます。最初の頃はよく分からずどんなことでも上の先生に聞いていましたが、ある時「ーーといった患者さんですが、どういった検査をすべきか悩んでいて…」と相談したところ、「それは学生レベルだよね」と叱られてしまいました。そして、1年目とはいえど医者なんだから、どういう対応にするか自分なりの考えを話すべきだとご教授いただきました。私は、「間違っていたら恥ずかしいし、1年目の自分が下手なことを言ってもな…」など何かと理由をつけて、自分で決めることや考えを話すことから逃げていました。もちろん、経験の浅い私にとって、上の先生を頼ることは必要なことですが、医師として自分の診た患者は自分が責任を持って対応するという意識が足りていなかったとハッとさせられました。
 当直をしていると自主的に勉強することの大切さも実感させられます。今までの大学生活では、テストに受かれば進級することができ、引かれたレールを歩いていけば自然と研修医に辿り着いたように思います。しかし、研修医になってからは、自主的に勉強をしないとできるようになりません。当直は忙しくて、最初のうちは次々と来る患者さんの問診をするだけで夜が明けて行きました。何度か当直に入る中で、このままでは何もできるようにならないと焦ると共に、来年は自分が指示を出す立場になるのかとゾッとしました。人に言われなくても、自主的に自分が診た患者さんのその後を追い、勉強していかなければならないのだと悟りました。
 悩みも多く、なかなかうまくいかないこともありますが、もがきながらも一つ一つ身につけ、成長していけたらと思います。  

■同期の仲間

 同じ1年目の同期にはいつも支えられています。落ち込んだとき、同期に弱音を吐くといつでも味方になってくれます。わかるよ、私もそう思うと言ってくれたその言葉になんだかほっとして、もう少し頑張ろうと思えました。また、皆勉強熱心であり、分からないことを聞くと丁寧に教えてくれたり、一緒に考えてくれたりします。研修医室でCT画像を見てみんなでわいわい言いながら話し合う時間や、今日あったことを報告し合う時間は、勉強になることはもちろん、私にとって癒しの時間でもあります。不甲斐ない自分ですが、こうしてやっていけているのは同期に恵まれたからだと思います。

■ローテーションについて

 日々のローテーションでは、1ヶ月ごとに診療科を回ります。それぞれ指導医の先生が丁寧に教えてくださり、大変勉強になります。疑問に感じたことにすぐ答えていただける環境に感謝するとともに、先生方の知識の深さに尊敬を覚えます。特に最初に回った呼吸器外科では、「医者になって最初に当たる指導医だから重要だね」と初歩的なところから熱心に指導してくださいました。「医者だけでは何もできなくて、看護師、栄養士、作業療法士の方々と協力しなければならない。だからいつでも相談しやすいような医者でいることが大事だよ」「挨拶を大切にするように。手術室に入ったら、看護師や麻酔科の先生にも挨拶するようにね」などその先生からは、医療知識だけではなく、医者、社会人としてのあり方も教えていただけたため、良いスタートを切ることができました。親切に教えてくださった指導医の先生方には心から感謝しています。

■最後に

 初めのうちは慣れない環境や人間関係、終わらない業務に気が滅入ってしまい、辞めたいと思ったことが何度かありました。しかし、患者さんからのありがとうといった言葉や、先生方からのよく頑張ったねという声かけに励まされ、半年勤務を続けることができました。振り返ってみると、目の前のことをこなすことにいっぱいいっぱいで、自分がどういう医師になりたいか、患者さんのために何ができるかを考えることができていなかったように思います。「あなたは将来どのような医師になりたいですか」大学入試でも病院採用試験でも私はこの質問に、「患者さんの生活に寄り添える医師になりたい」と答えたことを思い出しました。私の医師としての道はまだ始まったばかりですが、初心を忘れることなく、これからの長い道のりを見据えて一歩一歩大切に歩んでいきたいです。


令和6年1月23日


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