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研修医手記

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中濃厚生病院 研修医1年目 伊藤 里奈 (part40)

kensyuui-39.jpg 遊び呆けた春やすみ、明けたら医者になりました。

 とはいうものの、私が研修している中濃厚生病院では4月は現場には出ずに授業が続き、いつまで経っても本当に自分は医師になれたのか?国試が受かったのが間違いだったらどうしよう?と疑問に思い不安になる日々でした。その後いざ現場に出てみると座学でゆったりと勉強してきた環境とは違い、瞬時の判断を求められたり手技に汗だくで取り組んだりと、改めて自分が社会人そして医師になったことを実感する緊張感のある場面を多く経験するようになりました。毎日が新鮮で目先のことで精一杯になりながら日々過ごしていたらいつの間にか半年が経ちました。既に研修医の4分の1が終わろうとしているなど、時間の経過は恐ろしく早いものです。まだまだ未熟で毎日を必死に過ごしている最中ではありますが、研修医手記を寄稿する機会を頂きました。一度立ち止まり過ぎた半年を振り返ることのできる良い機会と考えお引き受け致しました。拙い文章ですが私の経験をありのままお伝えできたらなと思います。

 

■研修医の活躍の場

 研修医が役立つ舞台はというと唯一とも言えるかもしれませんが、当直です。初めて入った当直は怖くてドキドキするような、楽しみのような感覚があったことを今でも覚えています。患者さんのお話に翻弄され、検査の出し方も分からず、2年目の先輩のなす事全てが神の様で、とても自分に出来る気がしないと唖然としていました。一回の当直で覚えなくてはいけない事が多く必死でメモをしていました。前回の当直で覚えたこと、学んだことを次回に活かせた時は自分の成長を感じる事が出来てとても嬉しくなります。
 高齢者の診察が多い中で時々診察する乳児に対してはとても緊張します。初めて乳児を診察した際には、乳児など近くで見た経験がほぼゼロの状態で急に診察をしなくてはいけない状況で、こんなに小さな人間を診察をしたことなんてないぞと頭の中はパニックになりながら、チェックリストを元に震えながら乳児を診察したのも懐かしいです。
 当直では、自分が診察したことで見落としがあったり患者に不利益を被ったりさせないか不安で仕方ありません。今もまだ成長段階である私にとって毎回の当直が勉強の場です。そんな事情は患者さんにとって関係なく、患者さんにとって自分は1人の医師であり、自分の言葉を信じて受診してくださいます。今これを書きながら改めて反省し、一人一人の診察を丁寧にしなくてはいけないなと気が引き締まる思いです。  

■ローテーション

  日々のローテーションでも毎日新しいことを学ばせて頂いています。身につけなければならないことと自分ができることとの差があまりにも大きく、毎日自分で課したタスクを終えることで精一杯です。現場で学ぶ事が多いあまり、あとで調べようと思いたってもメモする時間がなく、思い返しても思い出すことができずに、幾つものことを忘れてしまうような勿体ないことをしてしまうことも良くあります。毎日失敗、毎日反省、同時に毎日成長を感じて全く退屈しません。失敗から学んで次に活かそうとすると別の失敗でまた学ぶ、ということの繰り返しで良いのか悪いのか分かりませんが、毎日必死です。気が滅入りそうになったときは昨日の自分より知識を増やせば良い、そう同期と慰め合っています。
 上級医の先生方はいつでも優しくご指導して下さいます。医学的な知識はもちろんのこと、患者さんに対する接し方や、コンサルの仕方、カルテの記載に対するアドバイスまで、手厚いご指導を賜り、感謝する日々です。
 中濃厚生病院の1年目は各ローテーションを1人で回るので先生方からの恩恵を一身に受ける事が出来ます。質問もマンツーマンで丁寧に教えて頂き、やりたい手技なども全てご指導の下やらせて頂けます。優しい先生方に恵まれて良かったなと思います。
私の印象に残っている上級医からのお言葉や学びをお話しさせて下さい。初めてのマルクでは針を刺して血を引く際につい「おお、出た」と感嘆する声を出して、先生から意図しない声も患者さんに不安を与えるので注意しなさい、と。すぐに感嘆の声を出してしまう私にとっては大きな学びでした。また、進みたい診療科を選ぶ際には、「挫けそうになるときは必ず来る。その時にその科にいくと決めたのは自分だ、言い訳ができないのだと。どんな時も自分で自分を納得させる事ができる所にしなさい」。何十年も同じ診療科でお仕事をされている上級医のお言葉はリアルでとても印象に残っています。
 成長意欲が高まるあまりに患者さんを「症例の一つ」として捉えてる自分がいることに気づき「1人の人間」に自分は診察させてもらっていることを忘れてはいけないと反省することも多々あります。
 救急外来ではずっと「痛い痛い、どうにかして、触らないで、針刺されたりして更に痛い思いするなら死んだ方がマシだ」と嘆かれたこともあります。ごめんなさいと謝りながから所見を取り、申し訳ないと言いながら問診して、患者さんに私たちは辛い思いさせているのだなとその時思い知らされました。それからはというものの私達医療職は患者さんに不快な思いをさせながら診察させて頂いていることを忘れてはいけないなと考えるようになりました。
 基本的な医療知識も付けないで現場に出た私は、薬の量や輸液をどれだけの量をどれくらいの速度で入れるか、指示の出し方も分からず、看護師さんに指摘されたこともあります。先生方、スタッフの方々には、失敗ばかりで何もできない頃から優しく温かく見守っていただき、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。看護師さん、放射線技師さん、その他コメディカルの方々はそれぞれの分野の目線から多くの患者さんをみており、それぞれの専門分野における知識を教えて頂くことも多くあり学びが更に深まり有難いです。まだまだ成長段階の私ですが、これからも皆さんのお力をお借りしながら残り1年半駆け抜けて行きたいと思います。

■COVID-19

 COVID-19が流行りだしてから研修医になった人達は、どこの病院でもそうかもしれませんが、沢山の発熱患者さんを対応をしてきました。軽症なため電話対応だけで終わることのできる人もいれば、大量の発熱対応の中に紛れ込む帰してはいけない重症な人もいます。日々の診療を一層難解にしてくるCOVID-19は本当に煩わしいものです。夏には発熱ばかり見ておりましたが、これを執筆している10月半ばにはやっと発熱者が減少してきました。このまま発熱者も減り続けて平和な日常診療に戻ってはくれないものかと悩んでおります。ずっとこのまま発熱対応というものは存在し続けるものなのでしょうか。そんな思考が頭の片隅に渦を巻ながら、今自分が患者さんのためにできる事をして、学ぶべき事を学んで日々過ごしていきたいなと思います。


令和5年1月30日


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