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研修医手記

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安城更生病院 研修医1年目 傍島 光昭(part26)

sobajima.jpg 長いようで短かった大学生活を終え研修医が始まってはや7ヶ月。仕事内容、知識面でわからないことが多すぎて覚えることに忙殺されるような毎日ですが、いつの間にか研修医生活も1/4過ぎてしまいました。できるようになったこともたくさんできました。でも一つ新しいことを覚えたりできるようになったことが増えるとまた新たな課題が見つかりそれをクリアしていく日々に正直終わりが見えない気もします。そんな中でも一歩一歩進んでいるということを信じてどうにかがんばれているのが現状です。

 私たちの病院では約1ヶ月単位で各診療科をローテートします。そのためその診療科の内容をつかめてきたという頃には残念ながら次の診療科に移らなければならないことも多々あります。学生時代のように「見学する」立場から変わって実際の患者さんの治療方針、社会背景まで含めて「治療する」立場になることによって言いしれぬプレッシャーを感じながら過ごす毎日です。

 卒業旅行から帰ってきて完全に抜けた気持ちで始まった4月1日からの研修医生活。楽しかった学生生活も終わってしまい、もう少し遊びたかったなぁという後悔の気持ちも少なからずあったわけで、ふんわりした感じで始まってしまいました。今私の研修している安城更生病院はモチベーションの高い若手医師がたくさんいる病院です。そんな人たちに囲まれながらの研修医生活。抜けがらのような感じで望むのは決して許されません。そんな私に少し転機になるような人との出会いがありました。今回はそのひと、言葉との出会いについて紹介したいとおもいます。

『えさをもらうのを待っていてはいけない。自分からもらいにいかないと食べられません。これからが勉強のスタートです』

 研修医生活が始まった4月1日、研修担当の先生からはじめにいわれたのを覚えています。医者になったのにやや人見知りである私にとって自分から求めて人に聞くのはなんかいやだなぁと思っていました。しかも国家試験合格のためにあんなに勉強した(つもり)なのにそれ以上の勉強をずっと続けていく なんてわかってはいたもののつらいなぁとも思っていました。しかし、実際に治療する立場に変わることによりその考えはすっかり変わりました。自分の責任で下手したら患者さんの人生が変わってしまうかもしれません。また、患者さんに聞かれて答えられなかったら信用を失うことになりかねません。知識を待っていたら必要なときに出てこないと大変です。今ほしい、これから必要になるであろう知識・技術は今にでもほしいと思って求めていかないといけないと思わされた 瞬間でした。

『10年後胸を張って地元に帰ろう』

 同期にも私と同じ岐阜県出身者がいます。そんな彼と話していたときにいわれた言葉です。私は生まれも育ちも岐阜、さらには大学までも岐阜大学でしたが研修医では遠く離れた安城で研修しています。家の都合もあって将来的には岐阜に帰りたいという気持ちはあります。正直はじめの方は岐阜を離れ地元でもない安城の病院に就職してどことなく後ろめたいところもありました。岐阜に帰ったときに「岐阜でやっていればよかったのに」といわれるような気がするときもありました。でも今では彼と出会ってそのような後ろめたい気持ちはなくなりました。同期の彼と出会うことで今では「ここで学んだことすべてを将来、生まれ育った岐阜に還元しよう」という気持ちで研修に臨むことができるようになったような気がします。大学入学時「将来は生まれ育った岐阜に医療でお返しをしたい」と書いた大学1年生の時の文章をふと思い出させてくれました。将来の自分の進みたい進路を再確認することができた出会いだと今でも思っています。もちろん今でもその気持ちは変わっていません。

『何年かしたら名医になる日を夢見て痛いの我慢するよ』

 先日病棟で担当している患者さんに侵襲的な手技を行う機会がありました。何度か上級医がやっているところを見学させていただいたり、自分で本やインターネットの動画で調べたりしていつでもできるようにイメージトレーニングをしていました。とは言ってもそのときは初めて行う手技でかなり緊張していました。どうにか一緒にいた上級医の助けを借りてやりきることができましたが、お世辞にもうまくできたとはいえず、患者さんにはかなり苦痛を与えてしまったと思います。自分だったら「もうこんな医者には診てもらいたくない」と思うようなできでしたが、患者さんは最後にお礼の言葉と一緒にそんなことを言ってくれました。そう言ってくれる患者さんはそんなにいないと思います。でもそう思っている人がいる限り、私たち若い医者には多くの人から一人前になってもらいたいという願いがかけられているのだと感じるようになりました。それまで「何でこんなに勉強しないといけないんだ」と思いながら過ごしていたとき もありましたが、その患者さんと出会うことで「早くもっと勉強しないと間に合わない」と思うようになったような気がします。

『日常の診療の中で疑問を持てるかが成功の鍵』

 これは私が安城に行くのを決めた先生、いわば私の目標としている先生から言われた言葉です。研修医の毎日は忙しいです。病院にもよりますが、基本的に私たちの病院では検査があれば早くに行ってすぐに検査ができるように準備をする。病棟では主治医より早くに病棟の受け持ちの患者さんを回診して、朝先生が来たら患者さんの状態、今後の治療方針についてディスカッションするのが基本です。そのため回っている診療科によっては朝6時台から病院に来て回診することなんて普通にあります。やっていることは何度かやれば自然と身につくことであり、覚えてしまいさえすれば頭なんて使う必要もありません。動作さえ覚えれば極端な話、仕事内容の大半はテレビに出ている猿でもできるでしょう。でもやっていること一つ一つには必ず意味があります。ローテートしている診療科のうち将来的に進むのは一つだけです。ただ単に「業務内容」だけを覚えるのなら研修が無駄になってしまいます。でも物事の考え方は共通のものがありま す「なぜこの検査をするのか」「なぜこの治療が必要なのか」これを考えてこそはじめてやっていることの意味があるはずです。忙しい中ですが時間があるとき に少しそうやって考えてみることを習慣づけるようにし、物事を考える癖をつけるようにしています。

 この7ヶ月という短い期間でしたが今までの大学生活とはひと味違った人との出会いがあったと思います。もしかしたら今までも同じようなことを何度かいわれていたかもしれません。学生から研修医へと立場が変わったことによって受け取り方も変わっただけなのかもしれません。これから先も新たな人との出会いがあると思います。それは同僚の医者かもしれませんし担当した患者さんかもしれません。今、診療科のことも含めて将来の進路について迷っているところがありますが、そのような人との出会いから見つけていけたらいいと思います。医者という職業に就いていますが出会いは同じ医者だけではなくコメディカルの方もいます。さらに言えば患者さんまでと出会いの場はかなり広いと思います。いろんな人から多くのことを吸収できるいい環境にいます。社会人としてはまだ若い立場にあります。そのような人一人一人との出会いを大切にして、多くのことを吸収し、自分の医者としての生活に役立てたいと考えています。とりあえず近況報告でした。

平成26年1月1日

掲示者

岐阜大学医学部同窓会
事務局長 横山年光

岐阜市柳戸1番1
電話 058-230-6091
FAX 058-230-6092


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