岐阜大学医学部に入学して
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岐阜大学医学部医学科1年 平墳 洋源
私が本稿を執筆している2024年10月ごろ、文部科学省から公開された『医学部医学科の入学者選抜における男女別合格率について(令和6年度入学者選抜)』によると女性の受験者数が5万2298人だったといいます。これは統計を開始して以来過去最多の人数であり、今後の状況にもよりますが、女性の医療への関心が高くなっていることの表れだと思われます。こうした流れもあるのでしょうか、今年度の岐阜大学医学部医学科への入学生のうち、女性が過半数を占めました。個人的な感想ではありますが、女性が極端に少ない状況よりも、わたしが依然通っていた男女共学の高校に雰囲気が近いため、私自身、このような環境に親しみを感じています。
申し遅れましたが、岐阜大学医学部医学科に入学した平墳洋源(ひらつかひろもと)と申します。(まだ同じ姓名の人を見かけたことがありません。)大学生という社会的な立場(浪人生ではクレジットカードも作れなかった)を手に入れ、専門科目の学習や学生研究員としての実験参加など、日々新しい体験に心を躍らせています。そんな中、新入生を代表して本稿を執筆させていただくことになりました。
1. 医師を志した理由
私が医師を志したのはずいぶんと幼いころからでした。世の幼い子らしく、普段からよく目にしていた医師(本当は歯医者だったのですが。)という存在に憧れを感じていたといいます。その後、気胸のために3度の入院と手術を経験しました。1回目の入院の際は、小学校の卒業式の日程と入院が重なったために卒業式に出席できませんでした。当時はそのことが原因で悲しい気持ちになっていたところ、担当の医師が同じ学校を卒業した別の医師を呼んでくださり、その先生から慰めの言葉をいただいたことを覚えています。2回目、3回目に入院した際には私が病院でも学習がしやすいように様々な形でサポートしてくださったのを見て、幼少期の漠然とした憧れは確かなものになりました。
こうして今、私は医師になるスタートラインに立っていますが、現在では患者やその家族とのコミュニケーションの重要性はますます増しています。母は、当時の担当医が毎日同じ時刻に私の状況を報告してくれたこと、術後に「自分がICUに残って見ているから安心して帰ってもらって大丈夫だ」と言われことで安心できたと話しています。またチーム医療が重視されるようになってきたこともあり、医師にもチーム内のメンバーに対し配慮が求められるでしょう。これからの6年間、人と積極的に関わり自己の人間性を磨いていきたく思います。
2. 学業
学業が私の本業である以上、第一に優先しておこなわざるを得ません。また、受験勉強を通して、時間を空けて繰り返し学習することの大切さを嫌というほど思い知らされたため試験勉強も一夜漬けとはせず、日々取り組むことにしました。私は一夜漬けで知識を得てもすぐ忘れてしまうので、この学習方法のほうが自分にはあっていると思います。受験は一人で勉強することも多かったのですが、定期試験は普段仲良くしている友人たちと分担して過去問の研究に取り組みました。結果として友人も私も悪くない成績を収め、チームで協力することの凄さを実感しています。もし受験も集団で取り組んでいれば、よりよい結果になっていたでしょうか。このチームワークを活用して国家試験突破まで駆け抜けられたらと思います。
3. 名教師「友人」
医学科という環境は、似たような出身地で、同じ年齢(多くの場合)の生徒が一学年に集まっていた高校とは異なり、今年度も出身地や年齢など経歴が多様な学生が集まっています。現役生はもちろん、いわゆる浪人生や、再受験生もいます。理系の他学部から来た人もいれば、文系から理系に転向した人もいます。こうした方々と交流することは似たような境遇の人と交流するよりもとても興味深く、私はさまざまな刺激を受けました。
今思い返すと多少失礼だった気がしますが、特に再受験で来られた方々には医学部に進学した理由をよく伺っていました。さまざまな返答がありましたが、各自の現状に対し内省や分析をし、楽ではない受験に再び挑もうと決意された友人の決断力や行動力の高さには感銘を覚えました。
医学科の学生として、私にも多様な選択肢があります。臨床医として働く道、研究に没頭する道、公衆衛生を向上させる公務員としての道、または産業医として民間企業で働く道などです。近い将来、これらの選択肢の中から自分にとって最適な道を選ばなければなりません。上記の彼らの話を聞き、受験が終わったからといってうかうかしていられないなと気づかされた私は、「自分は何になりたいのか」というキャリアビジョンを常に考え、それに基づいて今できること、したいことを考えたり学んだりして、日々を過ごすようになりました。例えば、学生研究員として研究に参加することを決めたのも、研究とは具体的にどのようなものか(以前は試験管を振るイメージしかしていませんでした)、どのようなことが求められるのかを体験したかったからです。
4. 人生の夏休み
医学部1年生ですので、時間に余裕があります。今だけのこの人生の夏休みを私は読書と語学勉強と MT 車の運転にあてています。
私の1番の趣味は読書です。本離れがすすむ昨今ですが、少し本の話をしたいと思います。幸い、今の時代はスマホ一台さえ有ればいつでも本が読め、重要だと感じた箇所にマークを付けたり、メモも自由に加えたりすることもできます。
レイ・ブラットベリ著の『華氏 451 度』という本があるのはご存知だと思います。本を読まないこと、自分なりに考察しないことに、警鐘を鳴らした本として有名です。本を読むこと、ましてや持つことさえ禁じられた世界で、人々が(耳にはめ込むラジオなどから)与えられる情報や娯楽に満足している様子は、70 年以上前に書かれた本にも関わらずどこか既視感を覚えます。イギリス全土で SMS を通じて広まったデマに基づき、移民に対する暴動が起きたことがありました。暴動の参加者たちが物を警官に投げ、さらにそれをそばで見ていた家族が暴徒に声援を送っていたそうです。このことは現代人が SNS 上の偽情報に踊ら
され、思考や問い続けることを放棄してしまっていることが顕在化したと思います。ここで、先ほど述べた、考えて生きることの大切さが繋がってきます。
幸い私たちの世界では作中のディストピアのように本が燃やされることはないのですが、効率化の名の下、本を読まなくなっているという点では同じでしょう。また、現代における情報操作やデマの拡散は、SNSの登場によってさらに顕著になりました。情報を盲目的に受け入れるのではなく、思考し、問うことの重要性がますます増しています。この能力を養う方法の1つが読書です。したがって、本を読むべき理由が増えたとも言えるでしょう。確かに大学生は部活や交際など、他にもするべきことが沢山あり、忙しいのは重々承知です。ですが読書も同様に捨てがたいものであると私は思っています。
末筆ながら、改めて受験の際支えてくれた家族、研究の指導を快了してくださった研究室の先生方、医学教育してくださる先生方、そして友人にこの場を借りて感謝申し上げます。最後までお読みいただきありがとうございました。
令和7年1月27日
掲示者
岐阜大学医学部同窓会事務局
岐阜市柳戸1番1
電話 058-230-6091
FAX 058-230-6092