当教室の研究について

進行性核上性麻痺(しんこうせいかくじょうせいまひ)と特発性正常圧水頭症(とくはつせいせいじょうあつすいとうしょう)の両者が疑われた患者さんのシャント術の有効性を検討する観察研究のご紹介

当院では、進行性核上性麻痺と特発性正常圧水頭症の両者が疑われる患者さんにおいて、シャント術の有効性を検討する臨床研究を行っておりますので、ご紹介いたします。

進行性核上性麻痺、特発性正常圧水頭症とは?

進行性核上性麻痺は体の動きがおそくなって固くなり、体のバランスが悪くなることでよく転倒するようになり、歩行が難しくなる進行性の病気です。進行とともに飲み込みの障害、認知機能障害も進行し、3-5年で介護が必要になることが多いです。この病気は脳内にタウという蛋白が老廃物となって蓄積することで起こります。残念ながら、病気に対して有効性の高い治療はまだありません。

一方、特発性正常圧水頭症は、頭の中にもともと存在する脳脊髄液という液体の排泄が滞り、脳を圧迫してしまい、歩行障害、認知機能低下などをきたす病気です。頭部MRIにて脳脊髄液の量が増えている場合に疑います。この病気には有効な治療があり、それがシャント術です。全身麻酔の手術で、脳とお腹、もしくは腰(腰まで脳脊髄液はつながっています)とお腹をつなぐようにチューブを体内に通し、頭にたまった脳脊髄液をお腹に逃がすことで、圧迫を解除します。手術の有効性は何年も期待することが可能です。

進行性核上性麻痺と思われていたが、実際には特発性正常圧水頭症である場合があります

この2つの病気の問題点として、その区別がとても難しい場合があることが挙げられます。 言い換えれば、進行性核上性麻痺と言われていた患者さんのうち、一部の患者さんは実は特発性正常圧水頭症であり、シャント術が良く効く可能性があるのです。

本研究は、この2つの病気が疑われた患者さんの、シャント術の有効性を予測する因子を検索することが目的です

我々は、この2つの病気が疑われた患者さんに対して積極的に評価を行い、適応があると判断されればシャント術を脳神経外科に依頼しています。本研究では手術の実施が決定した患者さんを対象としており、事前のデータと手術後のデータを収集させていただき、シャント術の効果のある患者さんをより高精度で判断するにはどうすればよいのかを検討することが目的です。

本研究の実施の方法

本研究の主な対象患者さんは、①PSPが疑われる(=専門的には、MDS-PSP基準にてpossibleもしくはprobable PSP-RSに該当する例)、②頭部MRIでiNPHが疑われる(=専門的には、頭部MRIにてEvans indexが0。3以上の例)、③歩行障害がある、という3つをすべて満たす患者さんです(詳細は次項参照)。このような患者さんにさらに精査を行い、手術が可能と判断された場合にはシャント術を行います。精査の内容ですが、画像検査に加えてタップテストと言って、腰に注射をすることで試験的に脳脊髄液を抜いて、症状が良くなるかを見る検査もあります。(症状が良くなっても一時的なので、手術が必要です。)シャント術後には、少なくとも2年間は岐阜大学の脳神経内科外来に継続受診いただきます。精査から術後のデータを収集し、解析させていただきます。

このように、専門医療機関で精査を受けていただくことで、進行性核上性麻痺と診断され「治療法が無い。」と言われた患者さんであっても、新しい治療を提供できる可能性があります。

主な参加基準

<参加できる方>主に、以下の全てにあてはまる方が参加できます。

  1. 60歳以上である

  2. MDS-PSP基準においてpossibleもしくはprobable PSP-RSに該当する。(同基準における「必須の除外基準」である正常圧水頭症の項目については、除外基準からはずす)
    ※MDS-PSP基準は、進行性核上性麻痺(PSP)がどれくらい疑われるかを、主に診察と頭部MRIから判断する専門的な基準です。

  3. Evans indexが0。3以上である
    ※Evans indexとは、頭部MRIにて、脳脊髄液がどれくらい貯留しているかを判断する基準です。値が0。3以上だと脳脊髄液が脳に貯留していると判断され、特発性正常圧水頭症の可能性が高まります。

  4. 歩行障害がある

  5. タップテスト施行から1週間以内に歩行が改善(timed up and go testにて5秒以上)する。(タップテスト実施不可能な場合は頭部MRIにおけるDESHの有無で判断する。)
    ※タップテストとは、腰に麻酔をして注射をし、脳脊髄液を排泄させる検査です。これにより頭にたまった脳脊髄液が一時的に排泄されるので、検査後に症状が良くなるかどうかによって、手術の有効性があるかどうかの予測ができます。ただしこの検査だけでは、症状は1週間もすれば戻ってしまうのが普通です。

  6. シャント術の適応があり、かつ手術に同意いただける

<参加できない方>主に、以下のどれか1つでも当てはまる方は参加できません。

  1. 2年間の定期的な通院が困難である

  2. 歩行障害の主たる要因が、進行性核上性麻痺や特発性正常圧水頭症以外である

  3. 専門的な検査(timed up and go test、10 m歩行テスト、頭部MRI、脳血流SPECTの4つ)の実施が困難、もしくは信頼性の高い結果を得ることが困難である

  4. 特発性正常圧水頭症以外の水頭症がある

  5. 著明な廃用症候群がある
    ※廃用症候群とは、運動量の減少によって、運動機能などの体の機能が低下してしまった状態です。

試験実施医療機関

本研究は、岐阜大学医学部附属病院 脳神経内科、東名古屋病院 脳神経内科、愛知医療センター名古屋第二病院 脳神経内科、東京医科大学病院 高齢診療科、岐阜県総合医療センター 脳神経内科で実施しています。

岐阜大学医学部附属病院研究代表者
研究代表者 岐阜大学医学部附属病院 脳神経内科 医員 山原 直紀
受付時間 平日午前9時~午後4時
外来電話番号 058-230-6000(大代表)
研究実施体制(当院および研究協力機関と、各機関における主たる研究分担者)
岐阜大学医学部附属病院 脳神経内科 下畑 享良 教授
木村 暁夫 准教授
吉倉 延亮 講師
山原 直紀 医員
岐阜大学医学部附属病院 脳神経外科 出雲 剛 教授
庄田 健二 助教
東名古屋病院 脳神経内科 饗場 郁子 院長
愛知医療センター名古屋第二病院 脳神経内科 安井 敬三 部長
愛知医療センター名古屋第二病院 脳神経外科 永谷 哲也 部長
東京医科大学病院 高齢診療科 清水 聰一郎 教授
竹野下 尚仁 講師
稲川 雄太 臨床研究医
岐阜県総合医療センター 脳神経内科 西田 浩 部長
本試験にご関心のある場合
本試験に関心がある、または本試験へのご参加を希望される場合は、かかりつけ医等に紹介状の記載をご依頼いただき上記施設の予約をとり、受診してください。
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