神経所見・検査所見
2024.10.18
Fromentが作った6つの塑像・・・なんの運動障害か分かりますか?
Froment(フローマンと読みます)徴候は,尺骨神経麻痺において認められる所見で,母指と第2指でものを挟む際に,患側の母指が過屈曲を呈する所見です(https://tinyurl.com/27fdjmua).名称の由来のJules Froment(1878-1946)はフランス・リヨン大学の脳神経内科教授です.第一世界大戦後,Charcotの弟子のBabiński(1857-1932)とともに戦争神経症や戦闘ヒステリー(いわゆるshell shock)について共同研究を行い,論文を執筆したことでも知られています.また彼の名は「Babiński- Froment syndrome」として知られる自律神経障害と筋萎縮を伴う疾患(現在のCRPSやRSDと関連付けられる病態)にも残っています.
さらにFromentはパーキンソン病の研究でも知られ,彼の名を冠した「Fromentの手首固化徴候」も有名です.最新号のLancet Neurol誌に,1920年代に彼が指導して制作した塑像が紹介されています.運動障害に関する理解を深めるために作られたもので,代表的な運動障害をリアルに表現しています. Paul Richer(Charcotと協力し,神経障害を描写する多数の彫刻やデッサンを描いた)の彫刻作品に影響を受けた可能性が指摘されています.6つの塑像,それぞれ,何の徴候を示しているか分かりますでしょうか?(答えは文末).
これらの塑像は,リヨン病院博物館(Musée des Hospices Civils de Lyon)」に収蔵されており,保存と展示が行われているそうです.また,これらの塑像は3Dスキャンされ,デジタルモデルとしてオンラインで公開されており,医学教育や研究において広く活用されています.
リオン大学は訪問したことがあります.この塑像のことを知らず,残念ながら実物は見ていませんが,機会があったらまた訪問したいと思います.
6つの塑像の示す徴候
• Antecollis(頸部の前屈,頸下がり)
• 小脳性運動失調
• Camptocormia(高度の腰曲がり)
• Laterocollis(頸部の側屈)
• Pisa症候群(体幹の側屈)
• Hysterical dragging gait(ヒステリーで認める有名な運動麻痺.下肢を引きずる歩行)
Ardaillona H, et al. Jules Froment's neurological statuettes. Lancet Neurol. 23, 1079-1080, 2024.(doi.org/ 10.1016/S1474-4422(24)00393-4)フリー動画