コラム

神経所見・検査所見

2024.04.26

頭後屈反射(head retraction reflex)の手技と意義

期待のルーキー,司馬康先生が回診で,頭後屈反射を認めた患者さんを提示しました.私はルーチンで行わない反射なので「なかなか,やるな」と思いました.研修した亀田総合病院仕込みのようです.早速,この反射についての議論が始まりました.まず方法ですが,できるだけ首の力を抜いてもらい,頭を少し前に曲げさせて,打腱器で上唇の少し上をやや下方に向けて叩きます.正常では,頭はさらにうつむきになります(反射陰性).しかし反射陽性ならば,頭は迅速に後屈します.この反射は,私の神経診察のバイブルのひとつ,Robert Wartenberg先生の「The examination of reflex(1945)」によると,上位頸髄の両側錐体路病変で生じるとの記載があり,具体的な例として,ALS進行期,両側性痙性対麻痺,dorsolateral paralysis(現在のどの疾患か検索しても分かりませんでした)やびまん性脳症で認めると書かれています.「ベッドサイドの神経の診かた」にも記載があり,反射中枢はC1-4とのことです.じつはこの反射,最近,注目されていて,私の動画コレクションのなかにも3つあります.hereditary hyperekplexia(グリシン受容体α1遺伝子変異2012),Niemann-Pick disease type C(2020. 核上性垂直方向性注視麻痺とともに特異的所見として知られています:動画),そしてIgLON5抗体関連疾患(2023)です.今朝のカンファレンスではこれらの動画を皆で見ました.簡単な反射なので,もっと診たほうが良いのかなと思いました.
1) Mov Disord. 2012;27:795-6.
2) Mov Disord Clin Pract. 2020 Jun 18;7(5):543-547
3) Mov Disord Clin Pract. 2023 Nov 17;10(11):1687-1690.
下記の動画は2)の論文のもので(オープンアクセス),3症例の垂直方向性核上性麻痺と頭後屈反射を示しています.

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