一般のみなさま糖尿病の治療と合併症について

糖尿病の治療と合併症について

自己判断は禁物、適切な治療を

特定検診の結果を、糖尿病の基準値(空腹時血糖値 126 mg/dL以上、随時血糖値 200 mg/dl以上、HbA1c 6.5%以上)と比べてみてください。基準値より高い場合には、必ず医療機関で正確な測定をしてもらいましょう。糖尿病ではないと自己判断すると治療開始が遅れる可能性もあります。また、ネットや週刊誌などを参考に自己流の食事・運動を実践し、糖尿病が重症化してしまうこともあります。まずは医療機関で精査して、適切な治療をはじめましょう。また、過去に糖尿病の診断を受けたものの、様々な理由で糖尿病の治療を中断してしまている方は、医療機関に定期通院して、健康的な食事や運動について学び、必要に応じて糖尿病治療薬の処方を受けましょう。

糖尿病は、初期には自覚症状がなく、医療機関に通院せず放置してしまう方もおられます。しかし、糖尿病を放置して、血糖値が高い状態が続くと、さまざまな合併症を発症します。重症化すると「人工透析」や「失明」、「足切断」にいたり、生活の質を著しく低下させてしまいます。また、「心臓病」や「脳卒中」などを発症して、生命に危機がおよぶこともあります。糖尿病を放置して血糖値が高い状態にある方が新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいことも知られています。

足切断、視覚異常の人数は、わが国の糖尿病患者数を1,000万人として推計しました。①JFoot Ankle Res (2021) 14(1):29; ②Jpn」Ophthalmol(2019) 63:26-33; ③日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況」(2019年12月31日現在)

糖尿病治療の目的

血糖値はもちろん、体重や血圧、血液中の中性脂肪やコレステロールの値を良好な状態に保ち、禁煙を遵守することで、糖尿病の3大合併症の発症や重症化を予防し、健康な人と変わらない寿命を確保し、健康な人と変わらない人生をおくれるようにすることが糖尿病治療の目的です。健康的な食事や運動を含め生活習慣改善を行い、必要に応じて糖尿病治療薬などの治療を行うことで合併症の発症や重症化が予防できることが示されています。

合併症予防のためのコントロール目標 HbA1c 7.0%未満

糖尿病合併症(神経障害や網膜症、腎症)の発症や重症化を予防するため、血糖値が良好にコントロールできているかの目安として、HbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)を定期受診時に採血で確認しましょう。HbA1cは、過去1~2ヵ月間の血糖値の平均値を反映するといわれます。国内で実施された熊本スタディーや海外で行われた研究から、HbA1c 7.0%未満を維持することで合併症の発症や重症化が予防できることが明らかにされています。あなたとあなたの大切な人のために、HbA1c 7.0%未満を目指しましょう(注)。

注)HbA1cの目標値は、年齢や診断を受けてからの期間、合併症の状態、低血糖のリスクなどを考慮して、患者さん毎に設定されます。受診時に、医師に確認しましょう。

人工透析による生活への影響

糖尿病により腎臓の働きが弱くなると、体内の老廃物を尿に排泄することができなくなり、人工透析が必要になります。ひとたび、人工透析を行うようになると週3回程度、医療機関に通院し、1回あたり4~5時間かけて血液中の老廃物を人工的に取り除く必要が生じます。また、人工透析を行うには、年間400~500万円の高額な医療費が必要になります。腎症が悪化して人工透析をはじめなくてもよいように、医療機関に定期通院して、適切な治療を受けましょう。