岐阜大学医学系研究科・医学部


MENU




学内組織




学内専用ページ


VOICE-岐大医学部から- 退職教授からのメッセージ

[ 過去の記事一覧 ]

『VOICE-岐大医医学部から-』第83回は、平成29年3月をもって退職される、医学系研究科 神経統御学講座 神経内科・老年学分野 教授 犬塚 貴先生にお話を伺いました。

■老年医学に関わって感じたこと:核家族化で求められる覚悟とは?

犬塚教授
略 歴             
1951年生まれ、専門は神経内科・老年医学。
1976年新潟大学医学部卒業。1978年新潟大学脳研究所 神経内科入局。
1981年から3年間、アメリカ合衆国 NIH客員研究員。1994年新潟大学医学部附属病院神経内科講師。1999年岐阜大学医学部教授(高齢医学)となり、組織改編により2004年より医学系研究科 神経内科・老年学分野教授。2008年から4年間医学系研究科長・医学部長を務めた。
2017年3月をもって退職。
日本老年医学会(理事、専門医、指導医)、日本神経学会(代議員、専門医、指導医)、日本認知症学会(専門医、指導医)、日本内科学会(評議員、指導医)、日本神経免疫学会(理事)、日本難病医療ネットワーク学会(理事)

 我が国では戦後、高度成長期に入ると、マイホームの獲得が容易になり、核家族化が急速に進み、従前の社会における様々なしがらみから逃れて幸福感を享受してきた。しかし核家族化は、独居になる運命が内包されており、それに対して必要な準備をする覚悟が必要である。

 一方で50年が流れ、寿命が著しく延び、それとともに非健康寿命も延びた。すなわち収入や会社とのつながりが切れた後、一人で、しかも肉体的、精神的に非健康的な年月を、死ぬ前に過ごさなくてはならないという運命がある。

 「生活障害」が症状である認知症の方の評価の際に、手段的日常生活動作を独居機能として重視しているが、認知症の問題以前に、機能の未熟者が男性に多いことに衝撃を受けた。高齢期における生活の自立は男女を問わず極めて重要であり、義務教育だけでなく、TVやネットを含め様々なアプローチによる社会教育がもっと行われてよいと思う。もちろん独居支援も進んでいて、既にコンビニや宅配、傾聴ボランティアなども行われており、介護保険サービスと共に支えとなっている。

 また、幼児の公園デビューと同様、高齢者の地域や、場合によっては施設内デビュー、すなわち他人との新たな関わりを意識せざるを得ない状況に入ること、それをサポートする体制も必要である。増加する高齢者の生活を意識した、街のつくり直しはハードはもちろんであるが、多様な交流ができる工夫が重要である。季節ごとに形を変えた様々なお祭り、町の飾り化粧、花壇づくり等があってもよいし、町おこしを兼ねて若い世代がそこに是非とも参加してほしい。保育所と宅老所の併設も良いが、老若が一緒に関わることができる場ができれば、それがしばしば高齢者の社会参加につながる。高齢者に限らず運動の効用が強調されているが、盆踊りやダンス、花の小道散歩、市場歩き、歌うなど楽しいものがよい。孤独の満足を食に求めることも多いが、栄養のバランスを考慮した甘みと満腹感を与える食材とレセピーの開発も大切である。健康願望が強くTVの健康番組も賑わっているが、健康が人生の目的になっている観もある。

 いつかは死が訪れるが、どのように死ぬかということを考えておくことも重要である。医療における自己決定は不慣れかもしれないが、望まない延命措置があれば記しておくべきであろう。手を尽くした上で、亡くなっても不思議ではない病態に出くわした時に看取ってもらいたい、と私は思っている。

    

■次世代へのメッセージ

 自分が実際、年をとってみないと理解できないことも多いと思う。ただ同じ日本人で、同じ空気を吸い、同じ食事を食べ、同じ風景を見ていても、自分とは違うのである。それぞれ受けてきた教育、時代の持つ精神風土が異なり、感じ方は千差万別である。時空を超えた想像力を膨らませてほしい。温もりのある家庭にあってもお互いの自立を大切にしましょう。非健康寿命を支えてもらう時期もやがてはやって来る、謙虚に生きることも苦痛軽減の知恵かもしれない。

 

 


問合せ先  〒501-1194 岐阜市柳戸1番1  岐阜大学 医学系研究科・医学部   電話:(058)230-6000
Copyright © 2009-2015 Gifu University School of Medicine. All Rights Reserved.