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診断・手術支援機器

1. CT

CTというのは、X線を使って、頭の内部を見る検査です。検査は、1分程度寝ているだけで終わります。初診外来受診の患者さんにおいては来院いただいた当日に頭の中の様子を、できるだけ早く知る必要があります。この検査は予約なしで受診当日に施行することができます。外からは見えない頭の中の様子 (頭蓋骨、頭の中の出血や梗塞、脳腫瘍など)が分かります。さらには、予約が必要ですが、造影剤を使用することにより頭の血管を立体的に評価すること(3D-CTA)や、脳循環の評価が可能です。


▲3D-CTA


2. MRI

MRIはCTとは異なり、"磁石の力"を使って頭の内部を詳細に見る検査です。検査時間は15〜30分程度とCTに比べると長くかかりますが、CTよりくわしい情報を得ることができます。造影剤を使用しないで脳や頚部の血管を診断したりすることも可能です。脳梗塞の発症6時間以内はCTでは診断できないことが多いのですが、MRIならすぐに診断できます。また脳循環や脳の機能も評価することが可能です。緊急の場合は24時間体制でMRI検査を行うことが可能です。またペースメーカーも種類によってはMRI検査が可能となりました。


▲MRI


3. DSA(脳血管撮影装置)

脳血管撮影を行うための機械です。当院には脳神経外科専用の脳血管撮影室があり、24時間、緊急の脳血管撮影、脳血管内治療に対応することが可能です。最新鋭の機械が導入されており、脳血管を立体的に描出する3D-DSAが施行できるほか、脳血流速度の測定や頭部CTも撮影可能です。脳血管の狭窄部や動脈瘤の形状の診断精度が向上し、より安全で効果的な診断、治療を行えるようになりました。

  
▲DSA


▲3D-DSA


4. PET(ポジトロンエミッショントモグラフィ)

当科では美濃加茂市にある中部療護センターの協力を得て、脳腫瘍の患者さんを中心にPETの検査を行っています。これは脳内のアミノ酸やブドウ糖の代謝をみる検査ですが、脳腫瘍の脳内での広がり具合や増殖の強さなどを評価する点でCTやMRIをしのぐ検査と言えます。脳腫瘍はブドウ糖を消費するため、ブドウ糖の代謝をみるFDG(フルオロデオキシグルコース)を注射し診断を行います。腫瘍の増殖力が高ければ高いほど、よりFDGが脳腫瘍に取り込まれます。しかし、正常の脳自体がFDGの取り込みが盛んなため診断が困難な場合があります。一方、アミノ酸の一つであるメチオニンのPETは、正常の脳にはほとんど取り込まれず脳腫瘍に取り込まれるため、脳腫瘍の広がり具合や増殖の強さを診断する際に威力を発揮します。これら両者を組み合わせることで、手術の前から腫瘍の悪性度(浸潤力や増殖力)の評価が可能であり、手術の計画を立てる上で重要な情報を提供してくれます。


▲脳腫瘍PET


5.SPECT (single photon emission computed tomography)

放射性核種を静脈内投与し、脳内への分布動態を投与直後から連続的に撮像することにより、脳血流量などを測ることが出きる検査です。脳梗塞や脳血管の閉塞・狭窄が認められる場合の脳循環の把握や、てんかん、痴呆、パーキンソン病の診断などに有用です。詳しい局所脳血流量を測るためには、動脈血の持続採血が必要となります。所要時間は30分程度です。


6. 音波断層装置

超音波断層装置 いわゆる“エコー検査”のことです。無侵襲に、短時間で簡単に行うことができる検査です。脳神経外科で頻繁に行われているのは頚動脈エコー検査と経頭蓋ドップラー検査の2つです。頚動脈の動脈硬化がすすみ、頚動脈狭窄症をきたすと脳卒中を起こす確立が高くなります。そんな時に頚動脈の狭窄の程度や、血流の向き、血栓の有無などを検査室で簡単に調べることができます。また、経頭蓋ドップラー検査は、くも膜下出血後の血管攣縮のモニターなどとして病棟で頻繁に使われています。

 


7.ニューロナビゲーター

最近の自動車にはナビゲーターが標準装備されているものも多くなってきました。見知らぬ土地に行ってもこのシステムがあれば道に迷うことなくスムースに目的地に到達出来るため大変便利です。脳の手術においても、目的のターゲットが脳の深部にある場合はニューロナビゲーターが非常に有用です。この場合の“地図”は頭部MRIです。手術をしながら、今現在操作している部分が脳のどこの部分であるか、3方向のMRI断面像でコンピューター画面上に示されます。勿論、術者は全く分からずに見知らぬ深部脳を手術しているわけではなく、間違いがないことを確認するための手術支援装置として使用しています。ただし「次に右に曲がれ」とか「左に曲がれ」とか指示を出す装置ではない点で自動車のナビとは異なります。手術はあくまで術者の目でみた判断で進められています。



8.レザフィリン治療

悪性神経膠腫などの悪性脳腫瘍は、周囲の正常脳に染みわたっていく性格があります。この浸潤した腫瘍は術者の目には認識しにくいために、細胞レベルでは完全に摘出できないことが多く、それらの残存腫瘍が再発の原因になります。これらの細胞をできるだけ選択的に(つまり正常脳にダメージを与えずに)治療する方法として、2016年6月から光線力学療法(レザフィリンⓇ治療)を導入しました。レザフィリンⓇ(タラポルフィン)という注射薬を手術前日に投与すると、腫瘍にだけ薬剤が取り込まれます。手術によって腫瘍をできるだけたくさん手摘出した後、摘出面(浸潤細胞が残っているところ)にレーザー光線(Panasonic社製のレーザー機器を使用)を当てることによって、タラポルフィンが強い殺細胞効果を発揮します。腫瘍の栄養血管も閉塞するので、より強い抗腫瘍効果が高まるとされています。

9. ポータブルX線カメラ(DSA)

移動可能なX線カメラにDSA(撮影しながら画像処理して骨が映らず血管だけを描出する方法)の機能をもたせた装置が手術室に設置されています。脳神経外科では経鼻的に下垂体部の腫瘍をとる際の位置の確認や、手術中に脳血管撮影を行って腫瘍や血管奇形を栄養する血管の確認、脳動脈瘤の根治の確認を行っています。治療効果を手術中に確認することで、より安全で確実な治療に役立てています。また、この装置を使って血管内手術を手術室内で行い、顕微鏡手術と組み合わせて、より効果的な治療を行うこともできます。

10.神経内視鏡

内視鏡手術は低侵襲であり腹部や胸部手術では広く普及しています。脳外科領域でも神経内視鏡手術が普及しつつあり、内視鏡単独手術から顕微鏡手術の支援に至るまで多様です。
内視鏡単独手術の代表例としては脳室内・脳内出血の血腫除去術、水頭症に対する第三脳室開窓術や脳腫瘍の生検術があります。
また、顕微鏡手術の支援としてくも膜下出血の顕微鏡手術時に内視鏡を併用し死角となる部分の観察にも有用です。
今後はさらに内視鏡手術の需要は増えていくものと思われますが、常に安全な内視鏡手術を確立する努力が必要です。



11.脳機能モニター

脳神経外科の手術では正常に機能している脳神経を傷害する可能性があります。このような合併症を減らすため、当科では手術中に様々な脳神経の働きをモニターで確認しつつ、神経の働きが温存されていることを確かめながら治療を行っています。また手術中に手足を動かす機能を損なわないように、MEPというモニターを行って運動神経をモニターしています。麻酔がかかった状態で手足を動かす機能が温存されているかどうかが確認できるため、極めて有用な方法です。