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2019.10.07

医師ガシェと「ひまわり」@第239回日本内科学会東海地方会

昨日,当科は標題の学会の事務局を務めました.滋賀医科大学循環器内科の中川義久教授のご講演で,興味深いお話がありました.オルセー美術館を訪問した際,強く印象に残った絵画のひとつ「医師ガシェの肖像」にまつわる話です(写真左).医師ポール・ガシェ(1828-1909)はサルペトリエール病院にも勤務したパリの精神科医で,てんかんと精神症状を患っていたゴッホの晩年の主治医でした.注目すべきは左手に持つ花がジギタリスだということです.ジギタリスは18世紀後半から心不全に使用されている治療薬ですが,てんかんにも用いられた時期があります,ゴッホの作品には写真右の「ひまわり」のように黄色が多く用いられているものがありますが,ガシェによりジギタリスが処方されたゴッホは中毒となり,副作用として黄視症を呈したというのです(Eye 1991;5:503-10).ジギタリスはNa-K ATPaseを阻害し,細胞内にNaを蓄積させますが,視細胞では,赤と緑を感知するR錐体,G錐体は機能不全になりやすく,その結果として黄色く見えてしまうのだそうです.名画にジギタリス中毒が関わっているという説に大変驚きました.

文献

https://www.nature.com/articles/eye199193

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