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2019.09.07

国際頭痛学会2019@ダブリン―新しい片頭痛治療の夜明け―

2年毎に開催される国際頭痛学会の今回のテーマは「新しい治療の夜明け」です.標的はカルシトニン遺伝子関連ペプチド (calcitonin gene-related peptide: CGRP)シグナルです.知っておくべき知見は以下になります.

  1. 片頭痛発作中にCGRP放出は増加する.
  2. 三叉神経血管反射の中枢である三叉神経節は,通常,血管収縮に防御的に作用するが,片頭痛患者ではこのシステムがトリガーとなり,痛みを知覚する.
  3. 三叉神経節において,CGRPはC-fiberに発現し,CGRP受容体はAδ-fibereに発現する.
  4. 三叉神経節や硬膜は血液脳関門を欠くため,CGRPやその受容体を標的とした治療薬の可能性が生じる.
  5. 実際にCGRP受容体拮抗薬に加えて,抗CGRP抗体(eptinezumab, fremanezumab,galcanezumab)あるいは抗CGRP受容体抗体(erenumab)が片頭痛発作の予防に対して有効,かつ副作用が稀であることを示す臨床試験が複数発表された.
  6. 片頭痛の慢性化は神経原性神経炎症,つまり三叉神経血管系における神経細胞,グリア細胞におけるプロテインキナーゼ活性化(CGRPシグナルの下流にあるcAMP依存性PKAの活性化)を介したサイトカイン放出により生じるという説が有力になりつつある.

今回の学会は,プレナリーから教育講演にいたるまで,ほとんどがCGRP関連です.2年前の本会とは打って変わって,エキシビションでも多数の製薬企業のブースが並び,大きな変化を感じます(写真はAmgenのAimovig®とTevaのAjovy®のブース).日本でも臨床試験が進行中で,近い未来に片頭痛治療の新しい時代が来ることは間違いありません.図はNat Rev Neurol. 2018;14:338-50.より引用.

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