コラム

神経所見・検査所見

2019.08.30

頸部痛,発熱,項部硬直,でも髄液正常・・・?

回診で,頸部痛と発熱を認め,項部硬直を呈するため髄膜炎と誤診しうる疾患について議論しました.リウマチ性多発筋痛症とも誤診されることもあります.環軸関節偽痛風,別名Crowned dens syndromeです. 60歳以上で偽痛風の既往があれば鑑別診断の上位に挙げます.1985年にBouvetらが提唱した疾患で,環椎の横靱帯にピロリン酸カルシウム結晶などの石灰成分が沈着し炎症をきたします.頸部単純X線やCTで軸椎の歯突起(dens)が王冠(crown)をかぶっているように見えることからその名称が付きました(左図).通常,2-3週間ほどのNSAIDs内服で改善します.症候と画像で診断し,髄液検査や不要な抗生剤治療を回避する必要があります.話はそれますが,環軸関節と聞く悲しい巨人を思い出します(右図).環椎,軸椎はAtlas,Axisと言いますが,Axisはギリシア語で「軸」を意味するAxonから,Atlasはゼウスとの戦いに敗れ,罰として天空をその双肩で支えることが命じられたギリシア神話の巨人の名が由来です.環椎も重い頭部を一生支えるためAtlasの名前がつきました. Arthritis Rheum 28:1417-20, 1985; Med J Aust 2017; 206 (5)

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