コラム

神経所見・検査所見

2019.08.27

一側性の大胸筋萎縮?

図Aは皮膚科診察の際に,右大胸筋の萎縮を指摘された86歳の男性です.筋力低下はないものの,明らかな左右差を認めたため脳神経内科にコンサルトされました.同側の短指症も認めています(図B).診断は?(出典はN Engl J Med. 2018 378(1):72.) これはPoland症候群で,片側の大胸筋の全欠損(図A)あるいは部分欠損(図C)を呈する先天性疾患です.名称は1841年に初めて報告したイギリスのSir. Alfred Polandが由来です.頻度は2万〜5万人に1人,右側に多いと言われています.同側の短指症や合指症を認めることがあります.原因は不明ですが,胸壁から生じる上肢芽が分化発達する時期に血流障害が生じ,結果的に鎖骨下動脈やその分枝動脈の血流低下が起こり,低形成・無形成が起こると記載されています.先日,紹介され受診した患者さんには病気というより,個性のひとつと考えてくださいとお伝えしました.大切なことは,不要な検査をしないようにすることです.

(図C出典)

https://www.drzoran.com/sfw-home-page/poland-syndrome-information/

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