コラム

医療と医学

2020.03.21

臨床試験において今後注目されるクロイツフェルト・ヤコブ病V180I変異長期生存例の検討

当科の林祐一講師らが,多くの先生方のご協力をいただき,Prion誌に遺伝性Creutzfeldt-Jakob disease(gCJD)の症例報告をしましたのでご紹介します.PRNP遺伝子V180I変異例の検討です.特有の臨床像を呈する病型で,家族歴を認めないことが多く,高齢発症,緩徐進行性ですが,拡散強調画像で大脳の浮腫性高信号病変を呈します(図).この病型はCJDの臨床試験のターゲットとなる可能性があります.CJDは進行が急激で,臨床試験にエントリーするタイミングを逸してしまいますが,この病型は罹病期間が23~27ヶ月と長く,臨床試験が可能です.より長期の生存例の存在も知られていますが,その臨床病理学的な特徴は不明でした.今回,5年間という長期間療養ができた症例について検討し,脳幹が障害から免れることと経管栄養が重要であることを示しました.「なぜ長期療養ができたのか?」というclinical questionを大事にし,長い時間をかけてきちんと答えを出した良い論文だと思います.

愛知医科大学(岩崎靖先生,赤木明生先生,吉田眞理先生),各務原リハビリテーション病院(和座雅浩先生),長崎大学(佐藤克也先生),東北大学(北本哲之先生)との共同研究です.

Hayashi Y, Iwasaki Y, Waza M, Kato S, Akagi A, Kimura A, Inuzuka T, Satoh K, Kitamoto T, Yoshida M, Shimohata T. Clinicopathological findings of a long-term survivor of V180I genetic Creutzfeldt-Jakob disease. Prion. 2020;14(1):109-117.

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/19336896.2020.1739603

一覧へ戻る