コラム

医療と医学

2019.07.25

「医の倫理」の歴史@岐阜大学

医学部1年生に年に一度の講義をしました.「医学史」という講義シリーズの1コマで,私は標題のテーマを選びました.目的は先達のことばを若い学生にぶつけて考えてもらうことです.まず「ヒポクラテスの誓い」で,「医師は自分の能力の限り,患者さんのためにつくすべきで,決して害を与えてはならない」「依頼されても人を殺す薬を与えない」を考えてもらいました.つぎは「扶氏医戒之略」で,緒方洪庵が若手医師に伝えた「たとえ救うことができなくても,患者を慰めることを仁術という」を考えてもらいました.それからノーベル賞益川敏英先生の師,坂田昌一先生の言葉「勉強だけでなく,社会的な問題も考えられるようにならないと一人前の科学者ではない」を紹介しました.いずれも私の年齢になっても難しく考えさせられる言葉です.最後は,「ヒポクラテスの誓い」の倫理的精神を現代化・公式化した「ジュネーブ宣言(図)」と,研究倫理の規定である「ヘルシンキ宣言」をみんなで読みました.図にはアスクレピオスの杖が描かれています.最初,ウトウトしていた学生も,最後はみんな真剣に考えてくれたようでした.

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