コラム

医療と医学

2019.02.12

もうひとつのRamsay Hunt症候群

今朝のカンファレンスで「Ramsay Hunt症候群はRamsay先生とHunt先生が発見した.○か✕か?」というクイズを出しました.✕が正解です.James Ramsay Hunt先生はアメリカの神経内科医です (1874-1937;左図).彼の名前を冠した症候群は複数あり,最も有名なものは水痘帯状疱疹ウイルスによって生ずる顔面神経麻痺を主徴とする疾患です(1907;右図).しかしもうひとつ歴史的に有名なものがあります.別名,dyssynergia cerebellaris myoclonica(ミオクローヌス性小脳性共同運動障害)と呼ばれるものです.彼は1914年に企図振戦を主徴とする3症例を報告し,さらに1921年,ミオクローヌス,てんかんを合併する疾患として報告しました.この病名は物議を醸し,後に小脳症状を伴うミオクローヌスてんかんであるDRPLA(内藤・小柳病)やMERRF(福原病)が日本人により分離され,1995年頃を境にこの意味では使われなくなりました.現在,私達が使用している診断名も将来,ひとつずつ疾患が分離され,同様に使用されなくなるものもあるのだろうなと思います.
JNNP 2001;71,149-154

一覧へ戻る