コラム

医学と医療

2018.02.26

糖質ステロイドは消化性潰瘍発生の危険因子とはならない!?

回診で,レジデントの大野陽哉先生が「糖質ステロイドはNSAIDsを併用しない限り消化性潰瘍の危険因子とはなりませんので,プロトンポンプ阻害剤(PPI)は中止しようと思います」とプレゼンし,「どういうこと???」と驚きました.根拠は下記「消化性潰瘍治療ガイドライン2015」の156ページの記載でした.これを読むと,ステロイドによる潰瘍の根拠は,1983年のMesserらによるメタ解析でしたが,後日,不備のため除外すべき試験が複数含まれることが分かり,それらを除いて再解析したところ有意差が消失したと記載されています.1994年に新たなメタ解析が行われ,ステロイド単独では消化性潰瘍のリスクとはならないと報告されています(ただしステロイドはNSAIDs潰瘍の危険因子と報告されています).長期のステロイド内服に,PPIを併用することは多いと思いますが,最近,PPIの長期処方は認知症(ビタミンB12吸収障害やアミロイドβ沈着増加)や骨折増加などのさまざまな副作用を来す可能性が指摘され,その処方は本当に必要な症例に限定すべきとも言われています.NSAIDsの併用や消化性潰瘍の既往がなければ,大野先生の発言のようにPPIの長期的使用は控えるべきなのかもしれません.先生方はどうされていますか?

NEJM 1983; 309: 21-24;J Intern Med 1994; 236: 619-632; JAMA Neurol 2016; 73: 410-416

消化性潰瘍治療ガイドライン2015(156ページ)

一覧へ戻る