コラム

脳血管障害

2019.11.19

「低酸素・低糖刺激末梢血単核球療法」を発表しました!!-第2世代細胞療法の幕開け-

私どもはこれまで低酸素・低糖刺激を行ったミクログリアが脳梗塞に対する新たな細胞療法になりうることを示しましたが(Sci Rep 2017).今回,その完成形とも言える新たな細胞療法をScientific Reports誌に発表しました.本研究は,新潟大学脳研究所の畠山公大先生,金澤雅人先生が中心になって行い,さらに医療イノベーション推進センター(TRI)の全面的な協力をいただきました.この研究のポイントは①酸素とブドウ糖の濃度を短時間低下させるという簡単な刺激により,末梢血内の単核球が,組織を修復する能力を獲得することを初めて明らかにしたこと.②iPS細胞や培養した幹細胞を用いた細胞療法と比べ,脳梗塞の発症早期からの治療ができ,がん化のリスクもなく,有効で安全な臨床応用が可能となること.③専門の細胞培養施設(CPC)を必要としないため,一般病院においても治療を普及できる可能性があり,かつ再生医療を格段に低コスト化できることが挙げられます.図は作用機序を示しますが,細胞療法に関わってこられた先生方には,細胞の極性変化,血液脳関門通過に加え,SSEA3陽性多能性幹細胞(いわゆるMUSE細胞)を介する点で衝撃が大きいと思います.TRIの福島雅典センター長は「第2世代の細胞療法の幕開け」とおっしゃいましたが,私どもも非常に興奮しながらこの研究を進めてまいりました.現在,採血から細胞の分離,低酸素・低糖刺激までを一貫して行える装置を,産学官共同により開発中で,早期の臨床応用を目指しています.詳細は改めてブログで解説したいと思います.

Hatakeyama M, Kanazawa M, Ninomiya I, Omae K, Kimura Y, Takahashi T, Onodera O, Fukushima M, Shimohata T. A novel therapeutic approach using peripheral blood mononuclear cells preconditioned by oxygen-glucose deprivation. Sci Rep. 2019 Nov 14;9(1):16819. doi: 10.1038/s41598-019-53418-5.

プレスリリース

http://www.bri.niigata-u.ac.jp/result/191115press.pdf

論文ダウンロード

https://www.nature.com/articles/s41598-019-53418-5

岐阜大学HP

https://www.gifu-u.ac.jp/news/research/2019/11/entry18-7561.html

新潟大学HP

http://www.bri.niigata-u.ac.jp/result/neurology/001268.html

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