岐阜大学医学系研究科・医学部


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高山病について


【 はじめに 】
 登山に不慣れな人のみならず,途中で十分な休息を取らずに一気に頂上に達したとき,頭痛や呼吸困難,時に精神神経症状などが出ることがある。これが高山病であり,急速に高地に到達した際に,その低酸素環境によって生じる急性の呼吸・循環・中枢神経症状を主体とした症候群である。

 

 高山病は,2,000 m以上の高所で,低酸素によって生じる身体症状の総称で,「山酔い」とも呼ばれ1~2日で軽快する軽症の病態から,「高地肺水腫・脳浮腫」や「急性低酸素症」のように早急に治療を必要とする重症の病態まで含まれる。通常,高地に順化していない人が,海抜2,000 m以上の高所へ数時間の内に登った場合に,急性の低酸素血症が生じ,その結果,高山病が発症する。高山病は,高地に到達後,2~3日以内に発症することが多い。また,高齢者では1,500 m以上から起こり得ることも知っておく必要がある。


★ 一口メモ
 ちなみに,夏山診療班は海抜1,500 mの上高地から1,600 mの横尾までの10 kmを3時間かけて歩き横尾で一泊します。翌日,2,400 mの涸沢まで登り,昼食をとって休息した後3,000 mの高さにある診療所に到達するスケジュールで行動します。


【 病 態 】
 高度の増加に伴い,吸入酸素分圧は低下する。そのため,急速(数時間以内)に高地に登ると,相対的な換気不足に陥り,肺胞低換気となる。その結果,低酸素血症が発生し,動脈血酸素分圧(PaO2)は低下する。また,肺胞低換気の代償として過換気状態となり,動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)も低下する。PaO2およびPaCO2の低下によって肺高血圧が生じ,これに肺血流量の増加も加わり肺水腫が発生する。さらに,PaO2の低下は脳血管の拡張をもたらし,その結果,脳の血液量が増加するため脳浮腫が発生する。


【 臨床症状と重症度 】
 一般に,高度の増加に伴い,「山酔い」と呼ばれる状態に肺水腫や脳浮腫,網膜出血などが合併し,重症度が増す(表1)。重篤な場合には,急性低酸素血症に陥る。日本には4,000mを越える高所がないため,網膜出血や急性低酸素血症が発症することはまれである。

★ 診療所登山のコツ
 これまでの記載でわかるように,急速に高度を上げることが高山病につながります。したがって,2日目は横尾を早く出発し,涸沢で十分に休息してから診療所まで登ると良いと思われます。


【 検査所見 】
合併した病態に応じて,種々の検査所見が得られる。
  • 胸部聴診:肺水腫の存在 → 水泡性ラ音(悪化の徴候)
  • 動脈血ガス分析:酸素分圧の低下
  • 心電図:低酸素血症による洞性頻脈  肺うっ血・水腫による右心負荷所見
  • 眼底:高地脳浮腫 → 乳頭浮腫


【 救急処置と治療方針 】
  1. 山酔い
     ごく軽症例では安静,保温,酸素吸入を行ない,出現した症状には対症療法を行なう。頭痛はロキソニンなどの鎮痛薬で軽快することが多い。症状が軽快しないか悪化する場合には,手遅れにならないように,直ちに下山させる。
  2. 高地肺水腫・脳浮腫
     入院治療を原則とするため,高地では絶対安静,酸素吸入を行い,迅速に低地に移送する。低地では,肺水腫や脳浮腫に対する救急治療が必要である。


【 予防法 】
 高山病の発症率,重症度,罹患期間は,到達高度,到達速度に左右される。また,登山による疲労や脱水,寒冷などの環境因子,高地順応の程度や心肺機能の個体差,さらには,睡眠不足や飲酒,鎮痛薬の服用なども発症の促進因子かつ病態の進展因子として関与する。現在のところ高山病を正確に予測することは困難であり,登山者には最良のコンディションで登山に臨むよう呼びかけ,休息をとりながらゆっくりと高地に到達するよう指導する必要がある。
  • 余裕のある登山計画
  • 水分補給を十分にする
  • 睡眠不足・深酒・睡眠薬等の使用はダメ


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