2 カリキュラムの編成方針


 医学研究科では,各講座ごとに講座単位で学生の教育・研究指導にあたっている。 また講座によっては臨床系講座及び基礎系講座間での研究テーマによっては共同して学生の研究指導にあたっている。 また多くの講座は他大学と学際的な共同研究を行い,学生を一定期間他大学へ留学させ,他大学の教授から研究指導を受けることも少なくない。 またその逆も行っている。 年毎に学際的なさらには国外の研究機関との共同研究も増加している。
 学生への講義,演習等カリキュラムがあり,それに沿って講座内の学生を主とした対象として講義,カンファランス,演習が実施されている。
 以下の項目にみられるように医学研究科の活性化にむけて漸次改善されつつあるが,その改善のあしどりは緩やかである。 今後医学部の発展のためには大学院の整備充実が最も緊急を要する課題である。
 
(1)医学研究科の各専攻と学生定員
 医学研究科は次の表のように 5 専攻からなり,入学定員は56名,総定員は224名である。
医学研究科の学生定員

 
(2)必修科目の修得単位数
 医学研究科の専攻における授業科目は必修科目及び選択科目としており,必修単位数は30単位以上とし,そのうち必修科目は,20単位以上を修得しなければならない。
 
(3)各専攻における必修科目,指導教官
 各専攻における必修科目,指導教官,主な研究内容は次の表のとおりである。
 研究指導教官及び研究内容(1998年9月現在)


 なお,研究内容と成果発表状況(18頁)をつなぐものとして,専攻分野(必修科目)別研究内容等紹介(医学研究科,平成10年7月)の冊子から当該専攻科の研究内容を摘録すると以下のようである。
 

形態系 解剖学特論(T)
 
1.カルシウム代謝に関わる内分泌器官,特に上皮小体の電子顕微鏡的研究

1)系統発生学的研究
 系統発生学的に両生類から哺乳類までの上皮小体の電顕写真はすべて我々が撮るぞ!の意気込みでこれまで多くの実験動物とつきあってきました。
 上皮小体を採るよりもカエルそのものを採ることの方に熱中した無尾両生類,郡上八幡まで遠征してお城の池の掻い取りをして得た有尾両生類(イモリ)の上皮小体,半ば死んだ気になって摘出したヘビの上皮小体。鳥類は孵化途上の段階で発生学的検索に適するので研究室の孵卵器は卵でいっぱいだったり,黄色いヒヨコが合唱していたりという時期がありました。小型哺乳類はマウス,ラット,ハムスター,モルモットを教室で飼育して研究に供しました。現在,系統発生学的研究は大型哺乳類に取り組んでいます。大型哺乳類は入手困難を乗り越えて中部各県並びに関西・関東の一部にも食い込んで動物園,水族館,はてはビーチランドや漁協に依頼しました。死んだ動物の組織を採らせて下さいと。特殊な外国産の動物(コアラ)の場合は原産国の政府の許可を必要とするそうですが,岐阜大学農学部出身の獣医師が各所で重要なポストを占めて活躍しておられ,行く先々でたいそう親切に対応して下さり,便宜を図っていただきました。小型クジラの場合は漁があったと聞くと駆けつけて漁師さんに大体の場所を言って大まかに組織をとってもらい,あとは港の解体場の片隅で目指す組織をとりだします。水生哺乳類の王者クジラに迫ることは系統発生学的見地からのみでなく,カルシウム代謝と重力負荷との関係を知る上でも興味は尽きません。
 動物種ごとに上皮小体を構成する細胞の種類や,細胞の微細構造の違いがあり,これらを追求することによりホルモンの合成・放出・調節のメカニズムに迫りたいと,県内外を駆け回っています。
2)実験的研究
(1)細胞内のホルモン合成・放出の時間的経過を電顕ラジオオートグラフで追求し,同時に電顕免疫組織化学により,細胞内のホルモンの局在を空間的に追う。
(2)甲状腺内もしくは胸腺,上皮小体の近くにカルシトニン分泌細胞(C細胞)があります。血中カルシウムを変動させる実験的研究では上皮小体と,このC細胞を同時に観察して血中カルシウムを上昇させるホルモンを分泌する器官と低下させるホルモンを出す器官の関係を形態学的に追求する。
(3)組織・器官培養により,細胞の由来を研究する。

2.ヒトの血管系についての解剖学的研究

 系統解剖実習を担当しているため,貴重なヒトの症例をたくさん見られます。ヒトの主要血管の分枝パタンの集積と分析(700例以上の腹腔動脈,大腿動脈,内腸骨動脈)を継続していますが,実習中に見つかった珍しい変異例としては重複上大動脈3例,右鎖骨下動脈を最終枝とする大動脈弓4例,嗅脳欠如例1例,痕跡的嗅脳1例,2弁肺動脈1例,馬蹄腎4例,坐骨動脈1例,その他腹腔動脈の種々の異常です。

3.血管中に色素や樹脂を注入して内臓における微細血管構築を走査電子顕微鏡で観察する。

形態系 解剖学特論(U)
 
 極微にして壮大な世界,ニューロンが綾なす神経回路網がヒトの思考,記憶,喜怒哀楽,行動の源となっている。この神経回路網を解析するのが我々の楽しみでもあり,また苦しみでもある。学生時代の神経解剖の講義から受けた印象とは全く異なる世界である。

 さて,知りたいのはホモサピエンスの神経系であるが,ほとんどの場合,この種での実験的操作は許されていない。それ故に,いわゆる系統発生的視点が必要となる。すなわち,比較解剖学の登場である。医学部を卒業した人は,おそらく,誰も,魚,蜥蜴の脳を本気で知りたいとは思わなかったであろう。ただ,このような種でも,ヒトの神経系の構成原則が具現化されていることを期待したにすぎなかったに違いない。しかし,外国に出ると,日本が視えてくるのと同じように,ヒト以外の種の脳を知ることがヒトの脳への理解を深めてきたのも事実である。幾多の進化論が語るごとく,もし,ヒトも魚も鳥も,みな common ancestor から発展してきたのだとすれば,魚は我々にとって胃袋を満たすのみの対象では,もはやあり得ない。
 我々は,視覚,体性感覚などに関わる構造と神経回路の構成を系統発生的視点に立って,解析している。現在,最も関心があるのは,モジュール構造である。これは従来の細胞構築では,決して描出することが出来ないものであり,神経活性物質の免疫組織化学,標識法などのテクニック(といえるほどのものではないが),それと些かの insight をもって,初めて可視化できる。
 神経解剖学の分野もご多分に漏れず,学際的になりつつある。1980年頃から,解剖屋さんが,CRT,Stimulator だのを備えて,intracellular injection に血道を上げ,生理屋さんが,HRP,PHA-L と騒ぎだすようになった。今は,解剖の教室で,酸素精製,受容体 のクローニングなどが routine に行われる,神経科学の時代である。解剖学第二講座でも,感覚系,前庭系,小脳系の形態学的解析に加えて,神経生理的,神経薬理的,神経化学的,行動学的アプローチが行われている。

 

形態系 病理学特論(T)
 
1.消化器癌発生機構に関する実験病理学的研究

1)大腸発癌 (a)ラット大腸発癌モデルを用いて,発癌過程におけるアポトーシス,サイトカインの役割の解析。(b)主にアンスラキノン系物質を用いて,大腸の炎症の発生とその発癌,発癌促進作用の解明。(c)ラット大腸発癌モデルにおける前癌性病変での癌遺伝子と抑制遺伝子の発現,酸素活性の変異の発見,解析。
2)肝発癌 ラット肝発癌モデルを用いて,発癌プロモーションに於けるギャップ結合を主体として細胞間結合,細胞間接着の役割と発癌過程での変動の解析。

2.癌の発生予防,発生要因検出のための病理学的研究

1)大腸発癌 (a)大腸発癌モデルを用いて,そのイニシエーション,プロモーションを夫々抑制する物質の検出とその機序の解明。(b)大腸前癌性病変を指標として大腸に対する発癌性の短期試験と大腸発癌モデルを用いて短期に大腸前癌性病変を指標として発癌抑制物質の検索。
2)肝発癌 肝発癌モデルを用いて,腫瘍発生,前癌性病変の発生を比較解析し,イニシエーション,プロモーションを夫々抑制する物質の検出とその機序の解明。
3)口腔発癌 4NQO誘発ラット口腔発癌モデルを用いて,そのイニシエーション,プロモーションを夫々抑制する物質の検出とその機序の解明。
4)乳癌 MNU又はPhIP誘発乳癌モデルにおける,種々の化学予防実験。
5)HPC/UDS test ラット並びにマウスの初代培養肝細胞に癌原物質ないし被検物質を投与してDNA損傷による不定期DNA合成の有無を調べ,癌原物質や変異原物質の検出。このシステムを応用した抗変異原物質の検出。

3.悪性細胞及び前駆病変診断の細胞病理学的研究

1)大腸癌 大腸癌の前駆病変早期発見のため,ラット大腸発癌モデルにおける前癌性病変での癌遺伝子,癌抑制遺伝子の発現やその変化,酸素活性の変異の発見解析,細胞周期の変動の検索を行い,ヒト大腸癌,線腫,過形成病変おいての癌遺伝子,癌抑制遺伝子,酸素,蛋白,粘液等の発現,消退,変異の解析。
2)肝癌 肝細胞癌,腺腫,肝前癌性病変における細胞間結合装置の量的,質的変動の解析。
3)細胞学 良悪性病変診断や境界病変診断のために悪性腫瘍,良性腫瘍,境界病変,炎症性病変等の細胞形態,細胞周期,AgNORなどその診断指標となりうるマーカーの量的質的変化を画像解析装置を用いた定量化の試みや分子病理学的研究。
この他,胃,膵,膀胱,脳,上気道等他の臓器においても同様の研究,トライアルを行っている。

 

形態系 病理学特論(U)
 
1.単クローン抗体の作製

 免疫反応が関与した疾患の理解には病巣にどのような細胞が集まり,どのような分子を発現あるいは分泌しているのかを知ることが必要です。このためには,病巣に出現した細胞の,免疫反応に関与する分子を組織標本上で同定することが有用です。必要な試薬,すなわち特異抗体は今日では多数が市販されています。しかしながら,新しい現象を発見するためには自分で未知の分子と反応する抗体を作製する必要があります。特異抗体は単クローン抗体の形で作製しますが,培養と抗体を選別する方法がキーポイントになります。私達の教室では約1ケ月という短期間内に必要な単クローン抗体を作り出すという優れた手法が完成されています。研究の1つの柱はリンパ増殖性疾患の解析ですが,具体的には種々のリンパ球分化抗原に対する抗体を作製し,腫瘍の診断,予後の判定,組織発生の解析を行なうものです。最近はジーンテクノロジーを用いて特異的なペプチドを作製し,これを免疫原として使う方法も開発しました。これにより必要な単クローン抗体がより確実に作製可能になっています。

2.リンパ増殖性疾患,自己免疫疾患,その他の研究

 前述のようにして作製された抗体はTリンパ球,Bリンパ球,マクロファージといった免疫担当細胞に特徴的な分布を示すことから,これはこのまま悪性リンパ腫やリンパ性白血病の診断ならびに組織発生の研究に使うことができます。単クローン抗体の作製,リンパ増殖性疾患の研究は1982年来の実績があり,このような研究は国内でもトップグループのものと自負できます。自己免疫疾患は慢性関節リウマチの研究を進めたいのですが,人手不足で今のところ休業中です。そのかわり,アルツハイマー病の発症機序の研究を免疫組織化学的に行なっています。アルツハイマー病は今後の高齢化社会の到来とともに深刻な疾患として問題になるのですから,何とかしてその解決の手掛りをつかみたいと思っています。ある病院を中心にして数人の研究者と学際的に研究する体制を作りましたので,成果があがる研究領域と考えています。これらと同時平行的にラットやマウスを用いた実験的研究も進めています。とくに,ラットは国内で研究者が少なく,私達が作る単クローン抗体は有用なものとして使用されています。

3.分子病理学

 今日では医学のあらゆる領域で遺伝子が解析され,その研究手法は非常に簡便なものとなっています。私達もリンパ性腫瘍,癌の転移,アルツハイマー病の研究に,免疫組織化学に加えて遺伝子の解析を試みています。例えば,皮膚に原発するT細胞リンパ腫の初期では炎症反応なのかリンパ腫なのか明確でないことが多いのですが,DNAを解析することで腫瘍としての性格を同定することができます。これは,診断や治療のみならず,腫瘍の組織発生を研究するのに有力な武器となります。また,私達が作製した抗体が認識する分子が重要な生物学的活性を持つことがわかれば,その遺伝子を取り出して染色体上の位置を決定することにも必要であり,現在はその手技的熟練度を高めるよう努力しながら研究に用いています。とくに,組織切片上で遺伝子の発現を見ることを中心に研究を行なっています。

4.血清学的な腫瘍の診断と治療の研究

 前述のような単クローン抗体作製技術の発展は,腫瘍の診断や治療に有効な抗体の作成を飛躍的に発展させている。即ち,クローニングされた遺伝子の配列情報を元に,特異的に反応する抗体を比較的簡単に作りだすことが可能になったのです。このような方法を用いて,色々な腫瘍の診断,さらには治療に役立つ抗体を開発したいと考えています。

5.分子生物学的な腫瘍の治療

 1990年にはいり,T細胞の活性化機構が明らかになり,腫瘍の免疫治療にも再度可能性がでてきました。私たちは免疫反応に必須の分子をジーンテクノロジーで腫瘍細胞に導入し,腫瘍細胞に対するより強い免疫反応を実験動物に惹起させることから始めています。そして,十分な情報が蓄積されたところでヒトの免疫療法に取り組みたいと考えています。そのために,現在,ヒト腫瘍細胞の特異的な抗原を,やはり分子生物学的手法で解析しています。このような方法は既にマウスや一部のヒトの腫瘍で実施され始めており,成果が期待される領域です。

 

形態系 微生物学特論
 
1.細菌の分子系統進化学

 この研究では,地球の45億年の歴史のなかで,生物誕生から現在までの様々な原核生物の進化を遺伝子を使い系統的に解析し,地球規模の生物の進化と多様性を研究しています。病原微生物を取り扱う医学部ではこの研究は異質に見えますが,最近の感染症は健康な人には病気を起こさない環境微生物や常在菌による感染がほとんどで環境微生物に関する幅広い知識が要求されます。教室では3代にわたって分類学を研究テーマにした教授が就任しており,系統分類学の研究では設備,業績,知識のすべての分野で世界のトップレベルを維持しています。これらの研究成果は基礎研究にとどまらず,感染症診断や病原体の検出を遺伝子で迅速に行う方法に応用されるようになっています。またこれらの分子系統の研究にはコンピューターを使いこなすことが不可欠で,大学院学生は各人専用のコンピューターを使い,遺伝子解析と,世界の研究者の最新研究情報をいつでも引き出せる国際ネットワーク環境を提供しています。原核生物から真核生物の進化,単細胞から多細胞生物への進化などに夢をはせて研究できる学生の養成を行っています。

2.食細胞寄生細菌と宿主の感染防御機構

 食細胞内寄生細菌にはサルモネラ,在郷軍人病の病原体,結核菌,ブルセラ,リケッチア等があります。これらの細菌が本来殺菌作用の強い貧食細胞に食べられても生存する共生現象を分子生物学的の手法で解明していくのが教室の2番目のテーマです。このテーマは1990年代になって飛躍的に研究成果が蓄積されました。これには癌の研究を通じて細胞生物学が進歩し,細胞応答が詳細に分析できるようになったという時代背景があります。この分野は微生物学より従来の生化学に近い研究分野ですが,今や細菌,免疫,癌病理,生化学の研究分野の枠が取り除かれ,これらの分野が細胞分子生物学という言葉で総括される時代になっています。従ってどの分野の研究者も総合的な細胞機能を理解し研究を行う必要があり,細胞研究の黄金時代を迎えています。この分野は国際競争が特に激しく,教室の研究レベルを高めるのに貢献しています。

 

形態系 嫌気性菌学特論
 

  1. 感染症の主要原因菌の検出を時間のかかる培養法を用いず,材料中の菌の遺伝子の特異的な塩基配列を増幅し,迅速かつ正確に検出することができれば,感染症の治療の向上に大きく貢献するでしょう。嫌気性菌の関与する感染症についてこの観点からの研究が行われています。
  2. 嫌気性菌感染症にはいつも複数の細菌が関与しています。複数の菌によって形成されるこの病態がどのように成立していくのか,又その化学療法をいかにすべきかは,十分解明されていません。動物実験も駆使してこの解析が行われています。
  3. 感染症の治療は化学療法薬に大きく依存しています。新しく開発される化学療法剤の嫌気性菌に対する効果の評価を通じて,化学療法剤とその正しい使用法を学ぶ機会を掴んでください。それと同時に,人間が新しく作り出していく化学療法剤に,確実に耐性を獲得していく細菌の姿を見て,彼らのとる戦略を分子生物学的に解析しています。
  4. 嫌気性菌は酸素に暴露されると死滅することから,病院内感染の原因となることはないと一般に考えられがちです。しかし,芽胞をもつ嫌気性菌はMRSAと同様に院内感染をおこすことができます。化学療法剤を服用すると生じる下痢の約20%はこの菌によるとされるクロストリジウム(ディフィシレ菌)を例にとり,院内感染の研究や予防対策を考える上で極めて重要な細菌の個体識別方法を確立し,院内感染の正確な解析をと研究が行われています。
  5. 人の大腸に生息する好気性菌である大腸菌に腸管病原性大腸菌があるように,人の大腸に生息する嫌気性菌であるバクテロイデスにも腸管病原性バクテロイデスがあっても不思議ではありません。バクテロイデスのエンテロトキシンと下痢の研究が行われています。
このような酸素を嫌うユニーク(?)な菌を扱う実験施設はとてもユニークな施設(?)として考えられます。しかし,嫌気性菌は極めてありふれた菌で,人との関係の極めて深い重要な菌であります。嫌気性菌は,人の粘膜上どこにも一番濃厚に存在し,また人のどの組織の感染症からも分離される菌です。この菌を無視して感染症を語れないと言っても過言ではないでしょう。どの臨床科においても大変重要な細菌です。

 

機能系 生理学特論(T)
 

 生理学的研究法には,analyticalな方法とintegrativeな方法の2種類がある。Analyticalな研究方法は,生体を構成する個々のelementの性質を研究する。生体を理解するためには,当然elementsの性質を理解する必要がある。しかし,個々のelementが多数集まって生体を構成した時には,elementsの性質だけからは想像できない性質が生まれてくる。したがって,生体を研究するためには,個々のelementに分けることなく,ひとつのsystemと考え,生体内での情報伝達及び機能発現を調べるというintegrativeな研究方法の必要性が生じる。我々の講座ではanalyticalな方法とintegrativeな方法を組み合わせ循環生理学的研究,神経細胞の生理学的研究を行っている。
analyticalな方法:摘出臓器,培養細胞などを用い情報伝達および機能発現を調べる。
integrativeな方法:麻酔下あるいは意識下の動物を用いwhole bodyでの情報の流れを調べる。
入学から卒業までの指導方針:
医学部の基礎系講座は何らかの意味で生体および病態の理解,あるいは病気の治療に結びつくような研究をするべきであるというのが我々の基本的な考えである。また,個人の研究については,その領域ではその人間が世界で最も豊富な知識と見識を持っていると自負することができるようになるというのが目標である。そのためには,着目の斬新さと大いなる筋肉労働が必要であるというのが我々の講座のポリシーである。
・1年は臨床研修を行い,病態を視る目を養う。
・2年は指導者に付き一般的な実験方法を学ぶ。この時期に予備的な実験および抄読会等を通じ自分の研究テーマを決定する。
・2年の途中で研究テーマが決まり次第,自分自身の実験を行う。
・3年および4年は研究の完成と論文の作成に当てる。
・余裕があれば大学院途中でも海外に留学が可能である。

 

機能系 生理学特論(U)
 

 生命現象に関する研究を機能的側面から捉える生理学を大別すると,動物性機能生理学と植物性機能生理学とに分けられ,生理学特論(・)では主に後者の研究領域を担当している。しかし,近年,学問体系自体も大きく変化し,特に体系の境界領域である学際領域の研究の進展が盛んになってきて,研究体系の分類自体も難しくなってきている。このような中,生理学特論(・)において研究している領域は「分子生理学」もしくは「生理物理学」と呼ばれている研究領域である。
 生命現象を理解するには,遺伝子が持っている情報から生み出される種々のタンパク質のそれぞれの構造と機能との関連を理解せねばならない。即ち,生体内ではタンパク質の多様な立体構造が巧妙に変化することによって種々の生理機能が営まれている(即ち,“生きている”状態)。一方,このバランスが大きく崩れた状態が病理病態である。しかし,研究方法が大きく進歩し科学の水準が飛躍的に進歩した現在でも,未解決の正常機能は多く存在している。
 生理学特論(・)では,「研究内容」の項にもあるように,タンパク質の構造と機能の関連を知るために,具体的には,血中に最も多く存在している血清アルブミンの構造と機能及びその病態に関する研究を行っている。タンパク質という非常にミクロな物質の特性を知るためには,通常,より大規模な研究・測定手段を必要とする。即ち,核磁気共鳴測定装置を初めとして,種々の物理化学的研究方法を用いて,タンパク質の立体構造と機能との関連を研究して行く。院生としてこの時期にこれらの解析テクニックをマスターできれば,将来的にそれを種々の病態解析に応用することも可能であろう。
 このように本講座では,タンパク質自身の物理化学的研究を進めているが,その一方で,「研究内容」の項にもあるように,生体組織内における水分子の存在状態の解析も並行して行っている。即ち,近年臨床医学の分野で磁気共鳴画像診断法(MRI)が,生体の非侵襲的早期診断法として威力を発揮している。このMRIにしても,どうして磁気共鳴現象によって生体組織が画像化できるのかと考える場合,その基本的問題として,実は,生体組織内の水分子の挙動を解析しなければ解決できない。これには,核磁気共鳴測定装置を用いて,生体高分子,特にタンパク質と水分子との相互作用を調べねばならない。このように,本講座では,臨床応用が非常に可能な基礎テクニックが修得できるものと考えられる。仮に将来臨床医学を専攻するにしても,本講座で修得した基本的な考え方やテクニックは,そのまま臨床医学における諸問題を解決するのに有力な手段となり得るであろう。

 

機能系 生化学特論
 
1.細胞膜脂質を介する情報変換メカニズムの分子遺伝学的研究
 各種細胞がホルモンなどの外来刺激に応答する際に,細胞膜脂質よりジアシルグリセロール(DG),(リゾ)ホスファチジン酸(PA)などのセカンドメッセンジャーがつくられ,ついで蛋白質リン酸化を介してさまざまな機能が発揮されるが,その詳細な分子メカニズムは明らかではありません。そこで,膜脂質よりセカンドメッセンジャーをつくる酸素(ホスホリパーゼC,D,A2およびスフィン