1 大学院教育について


医学研究科の教育・理念
 昭和36年 5 月に大学院医学研究科 (博士課程)が設置されている。
 医学研究科は医学に関する高度の教育・研究組織で,自ら先端的な医学研究を行うこととともに,医学部卒後の水準において独創的な研究能力と共に豊かな学識と人間性を備えた医学教育者・研究者の養成を行うものである。 また医療において地域をリードし,学術研究において常に世界的水準を追求し,これを維持することにある。
 岐阜大学医学研究科が,先進的な大学院医学研究科に伍して発展し,かつ国際社会に積極的に貢献してゆくためには,近年の学術研究の進展や社会経済の変化に対応し,基盤となる創造的な研究の推進やその成果の多様な応用・展開を可能とする創造性豊かな優れた研究者の確保と養成が急務であり,そのため医学研究科の果たすべき役割は極めて重要である。

 

理念等達成にかかる問題点
 昭和61年 6 月以来医学系大学院のみでなく大学院全体にわたって,大学院の量的な整備,目標,独立大学院設置のための基準,大学院制度の弾力化,学位制度の見直し,大学院学生の処遇等,大学院の認可システムの改善と評価システムの確立,留学生の教育体制の充実,その他について幅広く検討されてきている。 ここに医学系大学院の現状と将来像について(アンケート調査結果の報告)平成 2 年10月 9 日,国立大学医学部長会議の序文をこれまでの経緯の理解のために掲載する。
 昭和61年 6 月及び昭和62年 6 月,国立大学協会大学院問題特別委員会から 「国立大学大学院の現状と今後の在り方」 について報告書が出され,大学院の現状分析と問題点について,種々の要望事項が述べられた。 この中では医学系大学院については多くは触れられず,大学院全体としての結論が主体となっていた。
 これを受けて昭和62年の全国国立大学医学部長会議において,医学教育に関する専門委員会が設置され,昭和63年 5 月の臨時国立大学医学部長会議に 「医学系大学院の現状と将来像」 と題する報告書が提出された。 この報告書の緒言によると,医学系大学院の現状と将来像への希望について,国立大学医学部,医科大学に共通する考えとして,各国立大学医学系大学院がそれぞれに現状を把握し,将来像を構想するための基礎資料を提供する意図を持って取りまとめられたとある。
 また,この報告書によると,医学系大学院の果たす役割の重要性,大学院独立専攻等の設置による教官組織の充実,研究機器の充実による研究機能の充実,カリキュラム編成などによる教育機能の充実,研究に没頭できる学生の生活保証,卒業後のポジションが保証されるポストドクトラルフェロー制度の確立,学際的な研究の行われうる専攻の再編成,管理運営の機能の整備・強化,国際化,基礎系大学院及び臨床系大学院と臨床研修制度との考え方の整理の必要性,学位の多元化等の問題がアンケート結果により調査され,今後の問題解決のための資料として具体策の検討を今後にゆだねられた。
 これとは別に昭和62年10月大学審議会は文部大臣から 「大学における教育の高度化個性化及び活性化などのための具体的方策について」 の諮問を受けて,昭和63年 3 月に大学院部会が設置され,大学院の充実と改革,学部教育の充実と改革等について調査審議が進められ,昭和63年12月に 「大学院制度の弾力化について」 の答申が大学審議会から提出された。
 更に,平成元年 9 月文部省において大学院設置基準の一部改正が行われた。 これによると社会人を受け入れるための夜間大学院の基準,大学院活性化のための修業年限の短縮,大学院において大学のほか社会に役立つ人材の養成も目的とすること,教員資格の弾力化,独立大学院の基準,大学院の入学資格の弾力化,等について大学院の弾力化が行いうるようになった。
 これらを受けて,平成元年 5 月の臨時国立大学医学部長会議において,医学系大学院の現状を把握し,将来像を考える資料とするため,委員会の設置が承認され,同年 9 月25日及び10月19日開催の委員会において原案を検討の上,平成 2 年 3 月31日までに,アンケート調査の回答を依頼した。 平成 2 年10月 9 日再度,委員会を開いて回答内容を検討した結果,これを最終まとめとし,平成 2 年10月18日開催の第50回国立大学医学部長会議に答申を行うこととした。
 以上のように大学院の整備充実について昭和62年10月以来大学審議会等で審議され,平成 3 年 5 月答申されている。 基本的考え方として A) 大学院に期待される役割の増大;・ 学術研究の推進と国際的貢献,・優れた研究者の養成,・高度な専門的知識・能力を持つ職業人の養成と再教育,・国際化の進展への対応 B) 我が国の大学院の現状及び整備充実の必要性;・大学院の教育研究組織の整備,・大学院学生の処遇の改善,・留学生の教育体制の整備,・大学院の量的整備,・大学院に関する財政措置の充実などの施策を進め,質的な面でも量的な面でも大学院の飛躍的充実を図っていくことが必要であると述べられている。

 

その後の大学審議会の答申
 平成10年6月,大学審議会は,「21世紀の大学像と今後の改革方策について」ー競争的環境の中で個性が輝く大学ーとの副題のもと,中間まとめの要旨を公開した。大学院教育の理念等達成に係る問題として,主に大学院に係る部分を抜粋して理解のためにここに掲載する。

T 高等教育改革進展の現状と問題点
 大学院については,各課程において研究者養成,高度専門職業人養成などの目的に即した体系的なカリキュラムが編成されていない。学生が大学間を移動することはまだ少なく,また,教員の人事についても,同一大学出身者が教員の大半を占める学部・大学院などが多く学問的刺激が十分でない,大学院独自の教員組織が弱い,さらに学部学生も含め学生に対する経済的支援が不十分であるなどの問題点が指摘されている。
 
U 21世紀の社会状況の展望と高等教育
1 高等教育を取り巻く21世紀の社会状況
 これからの社会をどのように展望するかは,様々な変化や要素を考える必要があり一概に言い表すことは難しいが,・一層変化が激しく複雑化した不透明な時代,・地球規模での競争と協調・共生が求められる時代を迎える中で,・少子高齢化が進行し,生産年齢人口が大幅に減少すると同時に,産業構造や雇用形態に大きな変化が起こり,・職業人の再学習をはじめ,国民の間に生涯学習ニーズが増大する,他方,・学術研究についても進歩の速度が加速されると同時に学際化・総合化の必要性が生ずるなど,高等教育を取り巻く状況が大きく転換していくものと考えられる。また,産業や雇用の空洞化,少子高齢化による経済の潜在的な成長力の低下,高齢化に伴う社会保障給付の増大などにより,当面は,引き続き厳しい財政状況が続くことが予想される。
2 高等教育の規模
(1)大学(学部),短期大学の規模
 社会の高度化・複雑化・専門化の進展等に応じ,高度の課題探求能力や専門的知識などを有することが,社会生活を送る上で広く求められるようになっていく。また,少子化の進行に伴い若年労働人口が減少していく中で,我が国が引き続き発展していくためには,社会の各分野で活躍できる質の高い人材の供給を一定規模確保することが必要である。高等教育の正確な国際比較は困難であるが,概観すれば,欧米諸国に比較して日本の大学・短期大学の規模は決して大きいとは言えない。以上の状況を総合的に考えると,平成12年度から16年度までの期間に,大学及び短期大学の臨時的定員の半数以上の解消を図りつつ,18歳人口が120万人規模となる平成21年度以降最大70万人程度(平成8年度入学者数から約10万人の減)の入学者数を想定することは適当と考えられる。
同時に,このような進学率の上昇は学生の多様化の進行を伴うことに鑑み,卒業生の質を確保する観点から,教育機能の強化とともに,より厳格な成績評価が必要である。
 したがって,18歳人口の減少を踏まえ,大学等の新増設についても「将来構想」において示したとおり抑制的に対応することとし,我が国の高等教育の活力を維持し,時代の変化に即応して発展していくために必要性の極めて高いものについて認めていくことが適当である。
(2)大学院の拡充
 平成22年(西暦2010年)における大学院の在学者数は25万人程度になると推計されるが,今後の制度改正や産業構造の変化などを考慮すると,全体としてはそれ以上の規模に拡大していくと見込まれる。国は,この規模を念頭に置きつつ,特に大学院修士課程における高度専門職業人の養成を中心に量的な拡大を図り,大学院の質の維持向上と教育研究条件の充実のための措置を講じる必要がある。
なお,国立大学については,今後大学院の規模の拡大に重点を置く必要があるが,関連して状況に応じ学部段階の規模の縮小も検討していくことが必要である。
 
V 21世紀の大学像と今後の改革方策
大学改革の基本理念
 21世紀において,我が国の高等教育が世界的水準の教育研究を展開し,その求められる役割を十分に果たしていくためには,@課題探求能力の育成−教育研究の質の向上−,A教育研究システムの柔構造化−大学の自立性の確保−,B責任ある意思決定と実行−組織運営体制の整備−,C多元的な評価システムの確立−大学の個性化と教育研究の不断の改善−の4つの基本理念に沿って,国際的通用性・共通性の確保,大学等の自立性に基づく個性化・多様化の推進の観点を踏まえつつ,現行の高等教育システム全体を大胆に見直し,各高等教育機関が魅力ある個性の発揮と世界的水準の教育研究の展開を目指して切磋琢磨し合うような新しい高等教育システムへと転換していかなければならない。
・ 課題探求能力の育成−教育研究の質の向上−
・ 教育研究システムの柔構造化−大学の自律性の確保−
・ 責任ある意思決定と実行−組織運営体制の整備−
・ 多元的な評価システムの確立−大学の個性化と教育研究の不断の改善−
1)課題探求能力の育成−教育研究の質の向上−
 今後,高等教育の普及が一層進むことを踏まえると,卒業時における質の確保を重視したシステムへの転換が必要である。このため,学部段階においては,求められる人材像の観点から共通に必要とされる教育内容の再検討を行うほか,教員の意識改革,責任ある授業運営と厳格な成績評価の実施などを推進するための具体的仕組みを整備する必要がある。また,大学院については,その一層の高度化と機能分化を図っていく観点から,目的に応じた教育内容・方法等の整備,国際的に評価される教育研究の卓越した拠点を形成していくためのシステムの導入等を図ることが必要である。
2)大学院の教育研究の高度化・多様化
 大学院は,あらゆる学問分野にわたり基礎研究を中心とした学術研究の推進とともに,研究者の養成及び高度の専門的能力を有する人材の養成という役割を担うものであり,将来にわたって我が国の学術研究水準の向上や社会・経済・文化の発展を図る上で,極めて重要な使命を負っている。21世紀の社会状況の展望等を踏まえると,これからの社会が特に必要としているのは,細分化された個々の領域における研究と,それらを統合・再編成した統合的な学問とのバランスのとれた発展であり,学術研究の著しい進展や社会経済の変化に対応できる,幅の広い視野と総合的な判断力を備えた人材の養成である。社会の高度化・複雑化が進む中,自ら課題を探求し,柔軟かつ総合的に思考し,判断し,解決する能力の育成は,研究者の養成,あるいは高度専門職業人の養成や社会人の再教育など,いずれの方向性を目指すにせよ,大学院においても等しく強く求められるところであり,教育研究の高度化・多様化をさらに推進していかなければならない。
(1)大学院の組織編成の在り方
 @大学院の制度上の位置付けの明確化
 大学院においては,学部が教育研究上の基本組織とされており,学部を基礎としている研究科については,その運営を学部に依存している。今後,大学院がより一層充実した教育研究を実施していくようにするためには,学部を基礎としている研究科にも,大学が,その運営上の必要性等を判断の上,研究科のカリキュラムや学生の入退学の決定など大学院固有の事項について独自の立場から審議を行うため,研究科委員会に代えて,研究科教授会を置き得ることを明確にする必要がある。
 大学の多様な組織形態を許容していくため,大学院の教育研究活動の比重が高まり,これが中心的な役割を果たしつつある大学において,当該大学の教育研究目的を効果的に達成する責任ある組織の体制を整備するという観点から,当該学部とともに,研究科を学部と同等の基本組織に位置付け,当該研究科に教員を所属させ,研究科教授会を置くのみならず,人事は研究科が審議するとともに,全学的な運営に関与し得るような仕組みを法令上明確化する必要がある。
 A一定規模以上の学生を擁する大学院の専任教員等
 大学院の多様な発展を可能にし,かつ各大学院が質的にも充実した教育研究を実施していくためには,一定の規模以上の学生を擁する大学院にあっては,大学院専任の教員や大学院専用の施設・設備を備える必要があることを大学院設置基準上明確にする必要がある。
(2)高度専門職業人養成のための実践的教育を行う大学院の設置促進
 大学院の高度化,多様化を図っていくためには,大学院の各課程の目的を明確にし,それに沿った教育研究組織,体制の整備を図っていくことが重要である。
 社会の各分野における構造変化の進行に伴い,ますます高度な専門的知識・能力を持つ者が広く求められる状況に対応し,これまでの高度専門職業人の養成をさらに進めて特定の職業等に従事するに必要な高度の専門知識・能力の育成に特化した実践的な教育を行う大学院修士課程の設置を促進するため,制度面での所用の整備を行い,教育研究水準の向上を図っていく必要がある。
 例えば経営管理,法律事務,ファイナンス,国際開発・協力,公共政策,公衆衛生,教員養成などの分野に置ける高度専門職業人の養成に特化した大学院修士課程については,大学院設置基準等の上でもカリキュラム,教員の資格及び教員組織,終了要件などについて,これまでの修士課程とは区別して扱う必要がある。
この場合の学位については,国際的な通用性も考慮し,修士とすることが適当である。なお,修士(「専攻分野」)と表記する際の専攻分野の名称について工夫することが必要である。
なお,大学院の修了と資格制度との関係では,現在,法曹養成制度の改革が移行中であり,今後,法学系学部・大学院教育の在り方や内容を広く関係者の間で検討していく必要がある。
さらに,幅広い分野の学部の卒業者を対象として高度専門職業人の養成を目的とする新しい形態の大学院の在り方などについても,今後関係者の間で検討が行われることが必要である。
(3)卓越した教育研究拠点としての大学院の形成,支援
 卓越した教育研究拠点としての大学院の形成,支援のためには,専攻(分野によっては研究科)を単位とし,客間的で公正な評価に基づき,一定期間,研究費や施設・設備費等の資源を集中的・重点的に配分することが必要である。
 職業を持つ社会人の再学習のニーズにこたえるため,勤務の都合や通学の便宜など社会人の多様な状況に柔軟に対応し得るよう修士課程の修業年限について一層の弾力化を進めることが適当である。
@修士課程1年制コースの制度化
 社会人の大学院修士課程への積極的な受け入れを図っていくため,各大学の選択により,通常の教育方法に加え終末や夏休み期間中などにおいても授業または研究指導を行うなどの適切な方法により教育を行い,2年分のカリキュラムを実質1年に集中して実施するなどの履修形態の工夫により,2年未満の修業年限でも修了することが可能なコースを設けることができるような仕組みを導入する必要がある。
 その際,導入の趣旨から,社会人を対象とすることを原則とすること,及び現行の修士の学位を授与するにふさわしい水準を確保するような措置が必要である。
A修士課程長期在学コースの制度化
 社会人学生等の多様なニーズにこたえるため,あらかじめ標準修業年限を超える期間を在学予定期間として在学できる長期在学コースを各大学院の運用により設けることができることとする。