3 カリキュラム


カリキュラムの編成方針
カリキュラムの基本的な編成方針は次のような視点に立っている。
 1)一般教育と専門教育の有機的連携によって6年一貫教育を充実する。
 2)カリキュラムの編成に当たっては,各専門分野の連携を強化するとともに学際的分野をも考慮しつつ,医学教育の総合性の確立及び学習効率の向上を図る。
 3)専門教育においては基礎医学実習,社会医学実習及び臨床医学実習を重視し,テュトーリアルシステム主体の教育とした。また,セミナー等の少人数教育を活用して,情動面を含む教官と学生の緊密化及び討議による能動的学習によって問題解決能力の醸成を図り,密度の濃い知識を付与する。
 4)授業の実施に当たっては,コンピュータ,ビデオ等の学習に効果的な教育機器の活用を図るとともに,学生の自主的利用を推進し,教育の効率化に資する。6年一貫教育としてテュトーリアル教育21コース(表)のカリキュラムに加えて,医学概論,初期体験実習・(Early exposure)・・(基礎・社会医学セミナー),医用工学,情報科学,医学総論,総合医学等を取り入れた。

このうち,医学概論は,医学部長も加わり,医学史,医の倫理を含めることとする。Early exposure は,病院,福祉施設,保健施設等の見学にとどまらず,実際に介護を体験する。医療総論には,医師会あるいは地域で活躍している保健・医療従事者による講義を組み入れる。教養教育の中でのテーマ科目群(福祉等),個別科目(心理学,哲学等),総合科目(医療と生命)等を医学部学生に適合できるように組み入れる。総合科目には既存の単独講座では組めない科目をあてはめる。すなわち,遺伝医学,先端基礎医学,臨床免疫学,リハビリテーション医学,スポーツ医学,温泉医学,救急医学,老年医学(ターミナル・ケアも含む。),臨床栄養学等に関して,複数の関連講座との調整を図りながら,包括的なカリキュラムを組むこととする。最終学年2学期の各卒業試験後にある補充講義を行う場合は,次回に行われる試験科目に関すること,卒業に際して是非触れておきたかったこと,トピック的なこと等とする。
テュトーリアルコース担当教官等


教育活動の実施内容と方法
 岐阜大学医学部では医学教育の目標として,よい医師を育成することにポイントを置き,生物科学としての医学のほかに医の倫理・医療経済等の社会科学的側面を重視する。本学部は,学生が将来それぞれ保健・医療に貢献し,医学の発展に寄与することができるようになるために,卒業時に下記4項目を達成することをねらいとする。
 1)将来医学関係のいずれの領域に進むうえにも必要な,基礎知識「(イ)人間の心身の 正常な発育・構造・機能,(ロ)発育・構造・機能の高頻度の異状,(ハ)保健・医療における人間と地域・文化・社会・環境,(ニ)人間に有益又は有害に作用する物理的・化学的・生物的・心理的・社会的・文化的諸因子,(ホ)高頻度疾患・主要疾患の診断とそれらの治療の概略,(ヘ)緊急疾患の診断と応急処置,(ト)疾患の予防,(チ)リハビリテーション,(リ)保健・医療システム(保健・福祉資源を含む)」と基本技能「(イ)問診,(ロ)理学的方法による正常と異常の鑑別,(ハ)一般的装置を用いる診断法,(ニ)基本的臨床検査の実施法・選択・解釈と特殊検査法の選択・解釈,(ホ)臨床データの収集・整理・記録,(ヘ)臨床問題の認識と診断計画の設定と評価,(ト)基本的治療手技,(チ)患者・家族とのコミュニケーション」を修得する。
 2)生涯にわたって発展させるべき,保健・医療の専門職に必要な基本的態度・習慣「(イ)医学・保健・医療の問題に取り組む積極的態度,(ロ)医学・保健・医療の専門職としての社会への責任感,(ハ)社会・環境の中の複合的存在として人間を把握する態度,(ニ)保健・予防・社会復帰を含む包括的なものとして医療を把握する態度,(ホ)患者及びその家族に対する理解的態度,(ヘ)患者及びその家族との信頼関係を醸成する習慣,(ト)総合的・科学的かつ沈着・冷静な問題解決態度,(チ)自己の能力限界の認識と適切な専門家に対して助言を依頼する習慣,(リ)チーム医療・チーム研究における協調的ないし指導的態度」を身につける。
 3)医学的問題を正しくとらえ,自然科学のみならず,社会的・心理学的方法を統合して解決するための基本的能力を修得する。
 4)知識・技能・態度を自ら評価し,かつ自発的学習と修練によって,それらを向上し続ける習慣を身につける。
 5)6年生での臨床実習を受けるにあたり,4年次2月に全臨床科目から出題される臨床実習資格総合判定試験を受験し,合格しなければならない。

 本学部では6年一貫教育として入学後の早い時期から,医学生としての自覚を促し,自主的・積極的な学習態度や医師としての基本的態度を身につけるために Early exposure を実施しており,さらに学生の自主的学習態度を育て,医学研究への意欲を養うために,基礎医学・社会医学セミナーとして学生を研究室に配属させ自由研究の期間を設けている。さらに生命倫理・医療倫理学,医療社会学等の専門関連科目も医学専門教育と平行して行われている。卒前医学教育としては一般教育と臨床実習を重点検討課題とし,医学教育の方法については授業時間の短縮,重点教育,自主学習と問題解決型教育,少人数教育を目的としたテュトーリアル教育を行なう。さらに,社会的要請が強い教育項目,すなわち,社会医学,情報医学,医用工学,救急医学,プライマリ・ケア,老年医学を重視している。臨床実習の充実のためには教育に関与する教員の確保,教育組織の整備,附属病院と関連病院における臨床教育スタッフの確保が今後の問題である。大学病院の組織・施設・整備などの整備拡充及び関連研修病院の協力体制は卒前臨床研修の他,生涯教育を含めての臨床研修のため重要であり,客員臨床系医学教授・助教授の制度を含め検討中である。(平成10年6月現在)
(注:平成10年11月の教授会で,客員臨床系医学教授等の選考基準が制定され,学内及び学外における臨床実習に関連研修病院の臨床医が参加することになった。)

 

課題と展望
 医学教育のなかで主要な部分を占める臨床実習の在り方について検討に入っている。
 まず,1)臨床実習の現状と問題点,2)実習開始準備教育の必要性とその評価,3)実習のシステムを如何にするか,4)教官側の理解と協力,5)プライマリケア,ターミナルケア等の必要性とその対応,6)卒後臨床実習との関連等を検討し,近々改革できるようにする。そのためワークショップを頻繁に開催して,教官を啓発する。
 医学教育はややもすると講座別に授業科目が設定されてきた。平成5年度からカリキュ ラムに複合講座からなる授業科目をいくつか設定したが,さらに,その適格な運用法を検討発展させ,一方では6年一貫教育の医学教育を見直し,全授業科目とその時間を設定し,それぞれの授業科目にそって,それぞれに関連する複数の講座の教育群を構成し,平成7年度からは講座枠をはずした21のテュトーリアルコースを設定し,実施している。
 本学におけるテュトーリアル・カリキュラムは,講座の枠を完全に取り払った統合型であり,そのため,カリキュラムを実施する際,非常に綿密かつ詳細な計画が必要であり,より的確かつ効果的な教育・指導の方法及びカリキュラム開発を研究推進する組織の設置が必須である。また,「受験学力」のみを指標にするのではなく,医療人としての能力・適性を判断できる入学者選抜方法を研究するために,学生の入学時,在学時,卒業時,卒業後の活動を一貫してフォローできるシステムの構築も必要である。
 テュトーリアル・カリキュラムでは自学自習を基本にしており,従前にも増して,効率化した医学・医療情報提供システム等の学習支援体制,さらに,生涯学習の観点から,卒業後の地域医療従事者に絶えず進展する医学・医療情報を提供出来る情報ネットワークの整備も必要となってくる。特に,教材として学生に提示される教育情報は従前の図書,雑誌等の印刷メディアによる資料のみならず,生の患者情報をモデル化・整理した情報が主体となっており,データベース化を早急に進める必要がある。また,近年の学術情報を巡る環境は,極めて急速に変化しており,医学分野における学術文献についても,迅速かつ的確に情報提供できる電子化した新たな情報提供の形態が出現しており,これらに対応した教育の推進が必要となっている。
 以上の点から,医学教育を総合的に研究・オーガナイズし,また,医学・医療の地域中核機関として,24時間体制で学外の地域医療従事者へ最新医学情報を提供できる場として,MM 図書館機能,学術情報提供機能,医学教育支援機能,医学情報提供機能,高度画像情報処理等教育研究支援機能の5つの機能を有するメディカル・メディア・センター(MMC)の設置を検討中である。