3 教育・研究の将来構想


基本理念
 近年の先端技術を含む広範な科学技術の進歩に伴う医学・医療の進歩並びに高齢化社会の到来や生活様式の変化に伴う疾病構造の変化など,医学教育・研究の両面における質的・量的な変化には著しいものがあり,この傾向は21世紀へ向けて今後とも一層進むものと考えられる。
 これらに対応すべく,広範な,しかも高度な医学知識・技術を精選して修得させることも必須ではあるが,多様化する社会的要請に応え得る人間性豊かで倫理観に富む良き医師・医学者の育成を医学教育・研究の基本理念とする。

教育体制
 期待される医師・医学者を育成するには,まず,知・情・意が調和し,かつ,全人的立場に立ってものをみることができる医師をめざした教育をすることを目標にする。 また,世界の中の日本,日本の中の東海地方,東海地方の中の岐阜という位置付けを考慮しながら,地域に密着した,地域医療に貢献できる医師の育成も念頭におき,生物科学としての医学をはじめ医の倫理・医療経済等社会科学的側面を重視して教育する。
 以上の方針を基にし,次の点を考慮して教育することが必要である。
@ 医学・医療の進展に伴って,その専門化・細分化が進んでいるとともに医学の枠組を超えた学際的な領域の重要性も増してきたため,必然的に多量の知識及び技術を修得する必要が生じてきている。 しかしながら,単なる知識及び技術を蓄積させることに偏することなく,主体性・創造性の育成,問題解決能力のかん養,医学・医療に対する総合的視野の育成等に十分配慮する。
A 分子生物学を始めとして医学周辺科学の著しい進展とそれらの医学・医療への導入によって,ややもすると技術優先の傾向が見られるが,心身両面からの包括的医学・医療を目指し,生命に対して深い畏敬の念をもち,患者の立場に立って診療を行える人間性豊かな医師の育成,すなわち医師としての倫理観の醸成,人格陶冶に特に配慮する。
B 医学・医療の進展に対して常時関心を寄せ,新しい知識・技術の適用に関して的確な判断力を培うために生涯にわたって学習を継続していく習慣と,広く学際領域の関連諸科学にも常に向学心を持つ態度を修得させることに配慮する。
C 地域医療に関心を寄せ,地域住民の疾病の予防から社会復帰に至る医療全般の責任を有することを自覚させるとともに,必要に応じて地域医療の中での教育的役割を果たしていくことが必要である。 また,これら地域医療に貢献するためにもプライマリ・ケアを重視し,総合的に医学を修得させることに配慮する。
D 医学・医療の場における国際交流も急激に増加しており,また,開発途上国に対する国際医療協力の必要性も高まってきている。 したがって,これら国際的にも活躍できる医師・医学者の育成に配慮する。

研究体制
 最近の医学研究においては,特に関連諸科学との有機的な連携が必須となってきており,学際的分野との効率的な共同研究の推進が必要である。
 したがって,従来の講座単位を主軸とした研究体制を基本とするが,学部はもとより,大学院の活性化を図り総合的な共同研究体制を確立する。
 また,医学部内の共同研究システムに加えて,他学部との共同研究,例えば,動物実験施設を他学部にも開放するとともに,工学部とタイアップして自動診断装置・人工臓器・人工生体材料の開発研究への参加等を積極的に推進し,医学・医療の一層の進展に寄与する。
 さらに,後述のメディカル・メディア・センター構想のもと,マルチメディアを利用した教育・研究の推進,医療情報の解析,データベースの構築等を図る。
 また,年々急速に進展する医学研究に即応するため,国内の研究機関との連携を密にするとともに発展途上国への各種の援助を行うために,国際交流も積極的に推進させる必要がある。

 以上のような視点に立って,次のような研究体制の整備を図る。
@学部講座
 講座とは,本来教育単位として設けられたものであるが,研究単位としての利点を重視して,当面は講座単位の研究体制を基盤とする。 しかし,効率的に研究を推進するため,いずれの講座にも占有されることのない共同研究に供すべきスペース及び研究機器等の確保を配慮した総合研究室から成るセンターを整備する。
A大学院医学研究科
 大学院は卒後教育の場であるが,大学における研究の実質的な推進は,指導教官の下での教官及び大学院学生の研究遂行能力に負うところが大である。 その能力を発揮させるべき大学院医学研究科の使命は,先駆的な学術研究の推進及び将来の医学・医療のリーダー養成のためにも極めて大きい。
 そのため,本学では大学院の重点化,学部から離れた独立研究科への改編等を含んだ大学院の将来構想について,さまざまな方途が考えられ,真剣に議論を重ねてきたところである。
 しかし,現行の形態系,機能系,社会医学系,内科系及び外科系の医学研究における 5 大系列の研究体制の見直しを行うよりも,当面はその活性化を図ることとする。 また,カリキュラムの一環として,15の項目に亘る基礎技術トレーニングコースを設け,課程修了時までに最低 2 コースを履修させることなど,活性化に意を注いできているところでもある。
 一方,各専攻の定員及び入学希望者の実際は,その母集団を大きく占める内科系及び外科系の臨床医学系であるので,臨床系大学院の在り方が活性化に大きく関わってくる。 学部の研究体制が基盤である大学院では,学部の研究体制に大きく依存するので,学部の総合研究室構想の中に,講座から独立した大学院学生研究室に十分なスペースを与え,もって,活性化を図る。
 すなわち,大学院の拡充・強化に当たっては,学部教育との連携を制度化し,よって将来の指導者としての医科学者,高度専門職業人としてのリサーチマインドを身につけた,医療において地域をリードする医師を育成することを,大学院における教育・研究の理念とする。
B教育・研究施設
 研究施設は,各専門分野の研究を推進させるのみではなく,教育活動にも積極的に協力するものとし,次のとおり整備する。
ア. 反射研究施設
 反射研究施設は,身体平衡を反射学の見地から研究することを目的とするもので,臨床部門である脳神経外科学,眼科学及び耳鼻咽喉科学の各専門分野,さらには内科学の神経分野を加え,平衡感覚についての研究を基礎と臨床の両分野からさらに推進し,その成果を臨床部門に応用するよう拡充する。
 なお,移転時には総合診療グループの一部門に 「平衡感覚治療センター」 を設置する。
イ. 嫌気性菌実験施設
 嫌気性菌実験施設は,ヒトの粘膜をそのすみかとし,生理機能に直接に膨大な影響を及ぼしている嫌気性菌,及びヒトと共存する動物や病院を含めた環境をそのすみかとし,ヒトに頻繁にアクセスしてくる嫌気性菌について研究することを目的とする。
 今後は,その分子疫学的研究,嫌気性菌感染症とその化学療法に関する研究など,急速に進化・様変わりしている嫌気性菌とヒトの健康保持との関連性についての研究を一層推進し,健康保持のための嫌気性菌の適切な制御法や有効利用法を構築する。
ウ. 動物実験施設
 医学,薬学,生物学等の先端的な研究を推進する上で,常に再現性のある精度の高い動物実験が不可欠となっている。
 このような精度の高い動物実験を行うためには,科学的に十分吟味された良質な実験動物と動物実験のために厳重に規制できる環境が得られ,かつ,実験動物の愛護を配慮した施設・設備が必要である。
 そのため,実験動物を中央管理し,内容的・機能的に優れた飼育と繁殖を行い,研究及び実験の向上と安全を考慮した動物実験施設を整備し,全学的に開放する施設とする。
エ. その他
 上述の研究施設のほか,将来的には,社会的要請がより高く,かつ,研究業績の蓄積のある分野を,新たに整備する必要がある。
 以上の研究体制の基本構想に基づき,建物・施設等は次の 3 群を以って構成し,有機的に配置するものとする。
医学部講座等研究室群
@ 基礎医学講座C 嫌気性菌実験施設
A 社会医学講座D 臨床医学講座
B 反射研究施設

総合研究センター室群
@ 動物実験施設C 研究手法別共通機器施設
A RI 実験施設D 大学院学生研究室
B バイオテク研究施設

メディカル・メディア・センター室群
@ 医学教育開発・企画室C オーディオ・ビジュアル室
A 医療情報解析室D セミナー室
B 図書・資料室