新入生への講座紹介

 

細胞情報学分野

 私たちの体は約50兆個もの細胞からつくられており、細胞が生命の基本単位となっています。それぞれの細胞がお互いに情報を交換し、情報に的確に応答し、協調的に働くことにより生命が維持されています。我々の研究室では細胞がどのようにして情報をキャッチし、的確に応答しているか、その仕組み(細胞内情報伝達機構)について、細胞生物学や、遺伝子を研究する分子生物学も取り入れて、研究しています。また、老化、ガン、細胞死に関与する遺伝子の研究、遺伝子治療の基礎となる研究も行っています。最近特に力を入れているのは、アポトーシスという細胞が自殺する仕組みの解明です。紫外線や化学物質などにより我々の遺伝子は頻繁に傷害を受けます。これらガンの芽となる遺伝子異常を持った細胞は、オタマジャクシのしっぽが消えていくように、アポトーシスという遺伝子にプログラムされた方法で死んでゆきます。しかし、アポトーシスまで障害された細胞は異常増殖を続け、ついにはガン細胞となります。この仕組みを解明し、アポトーシスをリセットできれば、正常細胞には影響のないガン治療が可能になります。また、逆に脳梗塞や心筋梗塞の場合にはアポトーシスを抑制することが脳や心臓の保護に繋がります。


低酸素傷害による神経細胞死
a:正常細胞、b:低酸素により死んだ(殺された)細胞(ネクローシス)、c:アポトーシスにより死にかけている細胞、d:アポトーシスにより死んだ細胞