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研修医手記

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研修医1年目 渡辺 充(part25)

watanabe.jpg 働き始めて早くも6ヶ月が経過しました。研修が始まった当初は何をすればいいかも分からず、文字通り右往左往していましたが、少しずつ施設や人に慣れてきたように思えます。 働き始めるまでは目の前にある国家試験の事が気掛かりで、頭の中にひたすら知識を詰め込む毎日でした。悪い言い方をすると「作業」に近かったかもしれません。それに疑問を持った事はあまりなく(というよりはその時間もなく)、それがいつか役に立つのだろうという漠然とした考えで学生生活を過ごしていました。幸いにも部活動は充実していましたし、よく遊び、そこそこ学んだ、いい大学生活だったなあ、と卒業が決まった3月は俯瞰していました。今思うと非常に滑稽ですが。私は中庸という言葉が好きだったので、これからも人にできるだけ迷惑をかけない範囲のそれなりの仕事をし、興味のある分野を専攻していければいい、そう思っていました。しかしこの6ヶ月で少しずつ考え方が変わりつつあります。
 長い前置きになりましたが、今回は研修医手記という折。現在の一研修医がどのような生活を行っているかを第一線で働く先生方に、これからの後輩達に少しでも伝えられれば幸いです。
 私が一番印象に残っているのはやはり働き始めの内科研修です。当院では初めの一か月はなるべく内科で指導医と一つ上の先輩研修医と共にチームを組みます。指導医に最初に言われた一言は「とにかく早く病院に来い」でした。学生時代チュートリアルの8時半に間に合うように起きるのさえ億劫であった自分には絶望的な言葉でした。では具体的に何時に起きればいいのだろうと思いつつ、6時半に病院に。先輩はもうラウンドを開始していました。若干凹みつつ、次の日からはそれより早起きし、先輩とラウンドしつつ、自分の持ち患者さんも増えていく日が続きました。こう過ごしてみると、この時間は看護士さんらの申し送りの前で院内も動きやすく、また前日からの患者さんの変化を一早く察知し、指導医と回診する前に疑問点や改善策を調べておけるという意味でもとても勉強しやすい、そう感じるようになりました。実際にこの時間から来て活動を始めている先輩医師も見受けられました。加えて、「とにかく自分で考えてプレゼンし、納得いくようなプランを立てろ、一人の患者に責任を持て」そう言われました。受け持った患者さんは数えるほどでしたが、熱発や疼痛など突然のアクシデントでも自分で立案するまでは手を差し伸べてはくれませんでした。「そんなんじゃ患者さん死ぬよ?」と言われ、泣きそうになりながら薬を考え、輸液を考え、診療を続けました。それでも急変時は自分がコールするとすぐに来て下さり、対応策を練りました。指導医は臨床に直結するエビデンスを大事にされる方でしたので海外文献に親しむことの重要さも教えて頂きました。初めの2か月のほんの短い期間でしたが現場での経験的な医療と文献でのエビデンスに基づく医療、それら をうまく組み合わせた医療の実践を行っていきたいと考えるきっかけを頂きました。
 実際の現場での医療は国家試験の問題の様な一問一答では答えの出ないものも多く、それ故迷うことも多いですが、患者さんが笑顔で退院される時の充実感はそれに勝ります。院内の先生方のプロブレムの立案や稀な症候、疾患へのアプローチの仕方に学び、その上で机上で考えたものを実践する場、それを正しい方向へ導いてもらえる場は研修医だからこそ許される環境だと思います。何か繋げるものがあるという意味で働き始めてからの勉強は非常に有意義で楽しいものに変わりました。
 前述したように卒業する前は、自分が興味のある分野だけを絞ってゆっくりと成長していけるならそれでいいと思っていました。しかし今は、内科医志望であっても実際には麻酔や救急、ICUなどの急性期の現場で学ぶことは多くあり、それら全ては必ずどこかで繋がっているのだと痛感しています。
 こうして働いてみると、学生のうちにこれを読んでおきたかった、あの実習をもっと真面目にやっていればよかった、と思うことも多々あります。全ては必要な場面が見えてからの後出しなのですが、どの場面でもとりあえず頭と手を動かすことは大事かと思います。何事もやっておいてきっと損はありません。よく学生のうちは沢山遊んでいればいいよーという先輩がどこにでもいると思いますが、あれはきっと半分嘘です。沢山遊んで、沢山学んで下さい。 そしてもう一つ、沢山恥をかいて下さい。これはすべてに通じることですが、後に残る記憶は必死になったり、冷や汗をかいたり、ドジを踏んだりした経験です。
 自分が目標としているのは常に100点の行動をとり続けることではなく、何をすべきなのかを常に自分なりに考える姿勢と、そして分からない事をその分野の専門家に積極的にコンサルトして学んでいく軽快なフットワークです。まだ達成できぬブループリントですが、一番はよりよい医療として患者さんに還元する為に、各科で切磋琢磨しつつ、日々学んでいければと思います。
 最後になりましたが、常日頃ご指導ご鞭撻頂いている先生方、沢山刺激を貰っている同期や先輩方の皆様に感謝しつつ、研修医手記とさせて頂きます。

平成24年1月1日

掲示者

岐阜大学医学部同窓会
事務局長 横山年光

岐阜市柳戸1番1
電話 058-230-6091
FAX 058-230-6092


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